番 外 編


太初の春 The First Spring
――長男に

秋生まれのキミに
二度目の春がめぐってきた
さくら吹雪の舞う
公園の広さよ

 きのうの雨が蒸気となって出ていく地面に
 洗いだされた雲母が光る
 黄金の大地に立って
 キミは未踏の彼方を見つめる

秋生まれのキミは
今日、初めて春の中にとびこんだ
去年の木の葉の積もる
やぶの深さよ

 風は高い空から舞いおりた鳥のように
 ま新しく薫る
 透明な大気ふるわせて
 キミは雄たけびをあげボールを追っていく

 泥の大地を踏み
 走るとも歩くともつかぬ軽い足取りで 
 キミはむかし
 狩猟民族だったのだ

ほら 木もれ日の太初の春を
          むすこ  ゆ
ボールを追い 狩人の子孫が征く
by Hanna
 


太初の秋〜収穫祭 The First Harvest Home
――庭で遊ぶ長女に

秋の日の 日がな一日
あふれる種を 実を 手のひらに
陽のあたる 囲われた庭で ただ一人
黙々と 集めつづける

 茶色くなるまで待ったフウセンカズラ
 はじけた純白のワタ
 こぼれるアサガオ
 ころがるオシロイバナ
 ゆれゆれるネコジャラシ

 こちらの皿へ あちらの鉢へ
 こちらの籠へ あちらの桶へ
 きみは むかしながらの 採集民族

秋の日の 日がな一日
蜂たちや 蝶たちと一緒に
陽のあたる 囲い地で ただ一人
楽しげに 働きつづける

 夕べになり 空はオレンジに燃え
 庭に 実が 種が 選り分けて積まれれば
 おうごん
 黄金の月が しずかに照らす 収穫祭
by Hanna
 


自作詩のページ(Hanna's Poemoon)へ / ホームページに戻る