竜狩月 〜湾の向こうのラブ・ソング

 

§ 逃避行

We'll fly from this before the morning star.
... ... ...
Awake, awake, and we will sail afar,
Afar along the fleet white river's face--
Alone with our own whispers and replies--
Alone among the murmurs of the dawn.

ふたりでここを逃げだそう、明けの星が光る前に。
 … … …
起きて、起きておくれ、そしてふたりで遠く船を出そう
流れの速い、白い川面を彼方へ――
ささやきあい、返事をしあって、ふたりきり――
あかつきのつぶやきの中、ふたりきり。

     ――W・B・イエイツ「モサダ」第3場より
       瀕死のモサダに、エブレマーが。


 


          月ヲ渡レ
 ゆうらり あぶない 空の月
 姫ぎみの 金ぐさりのようだね
(気ヲツケテ、ソット、ソット!)
 切れないで 約束のネックレス

  油断は禁物、お嬢さん
  三拍子で ラン、タッタ
  ほそい ほそい 月ヲ渡レ
  はらはら どきどき ランナウェイ

 ぐうらり かぼそい 金の月
 たそがれの 空はサーカス
(急イデネ、ハヤク、ハヤク!)
 一番星 光り出す前に

  ああもうだめ
  いくら好きでも行かれない
  宙でふるえる 浮橋よ!
 
  あせりは禁物、お嬢さん
  バランスとって ラン、タ、ラ、ラ
  ほそい つめたい 月ヲ渡レ
  こわごわ それでも ランデブー
by Hanna
 


          竜 狩 月
真夜中の部屋のドアをあけると
湿った眠りのにおいが鼻をくすぐる
      ぼし    ぼし
天井に 一つ星 二つ星
         ゆめよいごと
ぷかぷか 浮いてる 夢酔事たち 

    あえんづき
 今宵 亜鉛月の首に乗って 
 大空高く のぼれば いいな
    かがみ
 銀竜 鏡竜 レンガ竜 
 火山島は 爆発だ、Bang!

真夜中の国のドアをあけると
湿った花びらのにおいが鼻につく
足もとに 一つ卵 二つ卵
ぶくぶく 泡をふく 蛙たち

    テレパスづき
 今宵 心話月の尾にぶら下がり 
 大空高く のぼれば いいな
     たん
 銀竜 炭竜 ヒスイ竜 
    ハンター
 僕は狩人 お供は星さ、Hoo! 

 今宵 石膏月のモザイク騒ぎ
 大空高く のぼれば いいな
     えん  こがね
 銀竜 塩竜 黄金竜 
 僕は闇夜の竜狩人、Hey!
by Hanna
 


        サテュロスの夜
 深い森の木は ざわざわ
 ふくろう
 梟は 大きな 大きな目で 月を測るよ
 春かな それとも冬かしら
 あそこで寝ているのは 誰、誰、誰?

  サテュロスよ 目を覚ませ
  つぼみのふくらむ 甘い夜だ

 広い牧場の草は そよそよ
 いたち
 鼬は 細い 細い腰で 分けてゆくよ
 冬かな それとも春かしら
 あそこで歌うのは 誰、誰、誰?

  サテュロスよ 火を燃やせ
  踊りの輪のまわる すてきな夜だ

  サテュロスよ 笛吹きならせ
       きぬ
  乙女らの衣なびく 暖かな夜だ

 森と牧場の境目で 火はごうごう
 野生のものたちの 陽気な 陽気な宴よ
 春だよ もう もう春だよ
 あそこに来るのは 誰、誰、誰?

  みんな みんな 輪になって
  ぐるぐる ぐるぐる 目がまわるまで
  つぼみのほころぶ きれいな夜だ
by Hanna
 


        竜 狩 月 2
まひるもつめたい 春のかど
うかんじゃきえる 雲のよう
魔法の呪文は プク プク プクン
白い帆かけた船ででかけた
                 づき
 リューカリ ユーカリ リューカリ月よ
 今宵 頭上で照り輝き
 夢に僕らを誘っておくれ

まひるはつめたい 春のかど
ながされはてたら 雲のよう
魔法の灯りは ホロ ホロ ホロン
銀月の調べにひかれて行った
               ぼし
 チッカリ ウッカリ チッカリ星よ
 今宵 舌先に落ちてきて
 金平糖みたくとろけておくれ

 リューカリ ユーカリ リューカリ月に
 僕は帆柱たてて祈り捧げた
 そうして西へとのりだしてった

 空前絶後の冒険に
by Hanna
 


      SECRET LOVER
海から吹きあげてくる 生暖かい風
靴ぬいで 誰もいない丘の上で
三拍子で踊るよ ラララ

 回転木馬みたいに ゆうらり ゆらら
 舟はめぐるよ 花の湾
 黒い霧の夜が 沖から流れて来ても
 僕の腕で眠れ 可愛いひとよ

海へ吹きおろすのは 冷たい木枯らし
襟たてて 誰もいない丘を背に
波止場へ降りてゆく ラララ

 揺りかごみたいに ゆうらり ゆらら
 夢はただよう 星の湾
 白い霧の彼方 沖へ漕ぎ出しても
 僕は忘れない 可愛いひとよ

 水平線を越えるとき
 僕は君の影を抱いて祈ろう
 僕の秘密のこいびとよ
 S E C R E T  L O V E R  S E C R E T  Y O U
 秘密のこいびとよ、秘密の君よ
 僕は記憶の彼方から君の名を呼ぼう
 言葉の意味さえ 忘れはてても
 僕の秘密のこいびとよ
by Hanna
 


          未踏の岸へ
こごえないで 雪の降る朝にも
太陽は何処かで昇っているから
冷たいのは 胸の宝石
星明かりだけまとえば じき 自由になれるさ

 あふれ出る唄を ほとばしる雨を
 この手のひらに受けて 踊れば
 僕の足もとで 世界はめぐってゆく
 ゆっくりひっそり――時には速く

おびえないで 海へ行く朝にも
僕は何時も祈りを投げあげて
天の神、地の神へ 届くよう
港を出て水道をぬけ じき 自由になるさ

 あふれ出る唄を ほとばしる雨を
 この銀の帆に受けて 進めば
 僕の夢どおりに 世界はとけてゆく
 誰も見ぬ 誰も知らぬ――幻の岸へと

こごえないで 雪の朝も
こおらないで 吹雪の宵も
そして僕は まだ誰も見ぬ岸辺に横たわり
君を待つのさ 何時までも
by Hanna
 

       トリット・パッカ
      徒 夢 酒 〜SECRET LOVER2
沈む夕月よ 僕らを照らせ
最後の赤い 斜光がとどく
帆をあげた 小さな船のうえ

昇る星々よ 僕らを照らせ
太初の白い 輝きで
湾をすべる 小さな船のうえ

 眠ろう 果てなき海のまん中で
 潮流に身をまかせ どこまでも流れゆく
 波のまにまに映る僕らの影は
 銀に濡れ くずれてはまた結ぶ
 浅い浅い 夕ぐれ時の夢のように

めぐる蒼穹よ 僕らを照らせ
まっさらな 遠い光に満ちて
海をゆく 小さな船のうえ

 眠ろう 果てなき夢路の途上
 トリット・パッカの魔法は けして決して醒めない
 風の切れぎれにひびく海鳴りの声は
 僕らを揺らし とぎれてはまた結ぶ
 深い深い 死す時の夢のように

 眠ろう 寂光浄土の夢の道
 眠ろう 僕らだけの海
 眠ろう トリット・パッカの夢幻郷
 眠ろう 僕らだけの逃避行
by Hanna
 

§ 月ヲ恋フ


       月恋詩 Getsu-Ren-Shi
きみの行くところ 歩くところ
花が咲き また 散り乱れる
けれども…
ああ なぜ、“けれども”?
――T LOVED YOU
時よりも彼方の思い出

きみの眺めるところ 見下ろすところ
花がしおれ また 増殖する
けれども…
ああ ほんとうに、“けれども”!
――T LOVED YOU
ビッグクライシスかみ
大 崩 壊より はるかその昔  
 めぐれめぐれ 不実な心の そのままに  それこそ 世の、きみの、あなどりがたきうつくしさ  きみの移ろうその下で  決して決してやまずに踊ります  タンテ、タンテ、タンテ、トゥ  トルカ、トルカ、トルカ、スゥ  恋を踊りに 生を死に  カティラン、レゲルダ、サナクレモン きみのめぐるところ 移ろうところ
花が輝き また 闇に
だから… ああ 今こそ、“だから”…! ――T LOVED YOU 永遠時制の引力方程式  タンテ、タンテ、タンテ、タンテ…  トルカ、トルカ、トルカ、トルカ…
by Hanna
 


      Good-evening to the Moon
こんばんは
寝ぐるしい夜に

くらくまっすぐなガラス窓ごしに
月と向かいあう
鳴き続ける眠りを忘れた蝉たち・・・
群れつどう羽のあるものたち・・・
その上へ、しずけさをそそぎながら
孤独に見つめる レモンの月と

 左肩のところ、ナイフがすべって
 切りそこねたように 闇に透けてますよ
 不安げなんですね それが
 でも あなたの心配は地上をはなれているから

こんばんは
ひとりぼっちの夜に

風もなく投げ出すような影の梢ごしに
月と向かい合う
鳴り続ける夏を忘れた空調機械・・・
点滅する夜を忘れた港湾工事・・・
その上へ、光を涙とそそぎながら
孤独に沈みゆく レモンの月よ

こんばんは
いらだつような熱帯夜に

こんばんは
つきとおるような孤独の夜に

ガラスごしに 梢ごしに
見つめるわたしを見つめかえす
あなたは孤独な真夜中の月

こんばんは
こんばんは
あなたは孤独なわたしの分身

こんばんは
ああ
こんばんは
by Hanna
 


          月とお見合い
訪ねてくれてありがとう
いつものことでもサプライズ
雨雲を急速に吹きのけて
ああ 姿を見せた夜の女王

まどかな月よ こんばんは
訪ねてくれてうれしいよ
愛のあかしもまことのしるしも
わたしに何もないけれど

 いずれ死にゆくこの身のかぎり
 あなたをあなたを見つめます

そこに居てくれてありがとう
わたしの果てないブルーな日々を
そっとのぞいて光さしのべる
ああ あなたは私のレディです

こがねの月よ ごきげんよう
また来てくれて ありがとう
あまりに惹かれ惹かれるあまり
触れることかなわぬわたしたち

 めぐりつづけるこの身のかぎり
 あなたをあなたをいだきます

 わたしは青いさみしい惑星
by Hanna
 


        恋唄をひとつ
恋唄をひとつ、トリ、ラ、ラ、ラ。
貴女は まるく、ほの白く
おだやかに 私を 見ていましたね
私は 狩に 出るのです
草ふみ 石ふみ 行くのです
ああ のびのびと 狩るのです

恋唄をひとつ、トリ、ラ、ラ、ラ。
貴女は ほっこり、首かしげ
それでも 笑って ゆれてましたね
私は 踊りに 行くのです
土ふみ 影ふみ 跳ねるのです
ああ ふらふらと 踊るのです

 僕は泣いたりしませんよ

恋唄をひとつ、トリ、ラ、ラ、ラ。
貴女は するどく、牙をむき
つらそうに 私を 指さしましたね
私は 旅に 出るのです
刺ふみ 氷ふみ 行くのです
ああ ひょうひょうと 走るのです

 僕は泣いたりしませんよ

 たとえ貴女が消えたとて

 僕は泣いたりしませんよ
 
by Hanna
 

           がんかけづき
          願懸月
地平の月は大きく見えた
カクテルグラスのように
沈んでゆく西のはて

 ヒトは死ぬときまできっとヒトリだ
 だからヒト、というのだろう
 仰向いたわたしの目に
 しずかに降る流星雨

地平の月をうたったひとがいた
平原からおごそかに
昇ってくる夜ごとの月

 ヒトは死ぬときこそきっとヒトリだ
 それがこわくて死ぬのがこわいのだ
 ああわたしが死ぬときのヒトリに
 たえられる強さをください

 強くなろう
 はがねのように水晶のように
 透きとおって月の光をみな通すまで

 ヒトヒトリ生きてゆくことは
 ほんとうにヒトリきりなのだ
 ほんとうに寂しいことなのだから
 そのヒトリを愛せる強さを
 月よわたしにください

今宵
天上に月はヒトリ丸く在った
わたしのたましいを映して
めぐりうつろう冴えた旅人




   *平原から昇る月を歌ったのは、サイモン&
    ガーファンクル(“AMERICA”)。
by Hanna
 

§ 葬送


      ジャスミンの花の月の夜
Hop a pop 野辺の宴のたけなわは
    そら
星らも天空で踊るよう
つないで 離して くんず ほぐれつ
Hop a pop, pop a hop, huh

 悟りの花、白く咲くのを待ち乍ら
 確かに ジャスミンの 淡い淡い月のかをり

Tick a tuck 浜の宴のたけなわは
星らも波間で踊るよう
ふるえて 消えて ふたたび 燃えて
Tick a tuck, tuck a tick, huh

 目ざめもせぬ、疲れた魂たちのため
 確かに ジャスミンの 淡い淡い月のかをり

  この世の祈りのただ中で
  眠りも果てぬ、やつれた心
  そのまま苗床で朽ちてゆく
  幾千もの夏待ち花の種たちのために
  ぼくは切なく 狂おしく
  世界相手に 踊るのさ

Hip a hop, tip a tap, huh

 発芽せぬ夢の嘆きは毒を吐き
 この地上をしだいに侵してゆくから

Lip a rup, shot a shat, huh

 悟りの花、白く咲くのを待ち乍ら
 確かに ジャスミン色した 淡い月あかり
by Hanna
 


    Yume−ura 夢-裏/夢-占
くもったガラスの向こうに昇る
運命の星を 眺めながら
もの思いにふける夜は
どこかで 星雲が爆発しているかもしれない

 T LOVE YOU その日 月齢は満ちて
 僕は 彼岸へたどりつくだろう
 二度と もう二度と
 きみを見ることもない

 T LOVE YOU その日 帆は風もないのに
 僕を はるかな国まで送るだろう
 もう二度と 帰らぬ
 故郷をあとに
      なか
ぬれた枕の内部でうごめく
無数の夢の種子を 感じながら
眠りにつく微熱の夜は
どこかで 呪文が唱えられているかもしれない

 SO LONG その時 地上の国を離れ
 僕は 上昇気流にのって出てゆくだろう
 二度と もう二度と
 君を想うこともない

“SO LONG T LOVED YOU
 僕を忘れ 日々を忘れ
 ただ 天上の夢だけ 忘れずにおいで”

“SO LONG T LOVED YOU
 神を忘れ 夜々を忘れ
 ただ 天上の夢だけ 忘れずにおいで”

“My Secret Lover
 T LOVED YOU
by Hanna
 


    Hana−umi 花-海/花-埋み
ゆるい風がジャスミンの香りを運ぶ夜は
ささやかな唄声が静寂のかげで聞こえる
馬鹿騒ぎ 忘れて すましこみ
         たえ
それでて 優しい 妙なる一刻

夜ふけ方 欠けた月が昇れば
花びらにおおわれた河口のさざ波が
海竜のうろこのごと うねる またうねる

 葬送船はは葦原をぬけ
 音もなく 海に出る
       さと
 山じゅうの 郷じゅうの花をあつめた河口から

 コノヒトハ ドコデ 生マレ
 ナニヲ夢ミテ 死ンダノカ
 リヴァッド ダハド しめやかに 唄ながれ
 海は かれを 迎える

丘の松は湾の方へ腕さしのべて立ち
ジャスミンも虚空めざしてはいあがる
雪のアイシングのように まといつき
夜明けもとおい 貴重な一刻
  もだ
時黙し 欠けた月照る海で
花びらは 少しずつ それぞれの旅に出て
    はとう
波間に 波頭に ゆれる またゆれる

 葬送船は花びらを追い
 音もなく 海をすべる
 国じゅうの 陸じゅうの花をあつめた湾の中

 ボクハ コウシテ 流レ
 キミヲ夢ミテ 死ンデイル
 リヴァッド ダハド ひそやかに 唄ながれ
 海は ぼくを 眠らす

この海の花園に埋もれて眠る夜は
鐘打ち鳥の唄声が湾のまわりから聞こえる
オオ、リ、ラ、 ル、ライ、ラ、
   そう
るり草の露は育ち
夜明け来ぬ 春の最期の門から
船は すべり出る 花びらとともに
行く手に いちめんの
花、花、花、
地上これまで 咲いては散った 無数の
いのち、いのち、いのちたち。
オオ、リ、ラ、 ル、ライ、ラ
いのちたち。

ジャスミンの香たき 眠らせておくれ
天空回廊 めぐって 旅に出る
君の面影 夢にして。
by Hanna
 


       竜狂月夜 Ryu-kyo-Get ya
ふれあえば 炎のごとく
燃えつきる 予兆の恋の月
紅く 紅く 照り映えて
熱狂の踊りのさなか
盃は砕ける

 潮たぎるのは海、冷たい夜の
 迎えは 妖しの火をともす
 乱れ飛ぶ磯波が 星と光る

         げ
 このまま 何も解せぬまま
          はし
 竜の月に狂い 船は疾る
 したたる雨が髪をうるおす夜

愛すれば 花の香のごとく
とけてゆく 予兆の恋の月
紅く 紅く 匂いたち
かなうべくもない夢のさなか
城は崩れる

 潮たぎるのは海、西方へ続く
 道は 妖しの香りに満ちる
 浮かれとぶいるかが星と光る

 このまま 二度と醒めぬまま
 竜の月に酔い 船は行ったきり
 したたる蜜の花開く夜

 このまま 二度と解せぬまま
 世の巡りも 星の神秘も 何もかも
 すべてを混沌の海に沈めて

きみは信ずるか 今宵の竜狂月夜
きみは認めるか 今宵の蜜月心中
西海の彼方 幻の地へ向け
道開けるのは 竜狩月よ
流れ流れて潮道は尽きぬ
死を 永遠を越え すべてを
混沌の海に沈めて

Such Love; love for you
by Hanna
 

*ふ ろ く

妖しの恋の想像に任せ つづれ織のごと この世ならぬ
恋唄を思い描いた。
以下、ちょいとタニス・リー風に…

          ファム・ファタル
「きみ」は、いかなる運命の女神か、
         ひと   フェアリイ
「きみ」は、時には女ならぬ妖精、
          ひと    セ ル フ
「きみ」は、時には他人ならぬ己が分身、
          ひと    ルゥナ
「きみ」は、時には人間ならぬ月姫。
                   バッカス
サテュロスの愛したのは白衣の乙女か、狂葡萄色の瞳の
少年か?
星の散り敷く夜、船出したのは、まこと二人か、己れと
影か。  おうごん
求めたのは黄金月ではなかったか、
抱きとめたのはこの大地ではなかったか。
楽園を出た時、確かにつないでいた手のぬくもりは、い
つの間に、いずこへ消えた? トリット・パッカ
否、否、すべては月のあやかし、徒夢酒の見せた夢。
僕はひとり、それでもこの体の中に感じるのは君の脈動。
きみは僕、僕は月、
愛は混沌の蜜の海をすべる白い葬送船。
西への潮は、月にひかれ星々に見守られ死の門をくぐっ
てさらに続く。
逃れの道をたどる者は愛しい者を記憶から捨て、しおれ
た花びらに包まれて、ただ醒めぬ眠りに終結する。
by Hanna
 


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