火星海賊108  kaseikaizoku one-o-eight

火星への夢を育ててくれたいくつかの書物から生まれた、連作詩物語
天文年鑑 (誠文堂新光社)
COSMOS (カール・セーガン)
スター・レッド (萩尾望都)
星の帆船 (ウィリアム・M・ティムリン)
火星の王女 (E・R・バローズ)
タイタンの妖女 (カート・ヴォネガッド)
夢みる惑星 (佐藤史生)
火星年代記 (レイ・ブラッドベリ)


 

§ 夢の始まり


        火星の深夜高速
ビイーム ビオーム ビム
オレンジ
橙色の目 いからせた 火星の儀仗兵
一列縦隊で 地平までつづく
ゆがみ うねりながら

 バックグラウンドに宇宙の闇
 青く黒く 黒く青く
 ぽつんと漂うは 月のレモンのしぼりかす

 重力 0.17G
 等速運動 夜中のハイウェイ
 僕は 鳥になる

グイーム グオーム グム
オレンジ
橙色のほたる 結晶化した もろい星
二列縦隊で 空までつづく
一組ずつ こちらへと

 バックグラウンドに沈む宝石
 きらきら ちらちら
 ぽつんと移るは 月のレモンのしぼりかす

 浮力 飛力 幻力 
 永遠運動 深夜のハイウェイ
 僕は 夢の月になる




   *阪神高速のオレンジ色のランプの列、むかしの図
    鑑にのっていたタコのような火星人(想像図)に
    似ているようで、こんな詩ができました。「バッ
    クグラウンドに沈む宝石」は、六甲山系の夜景が、
    星のむれのように見えたのです。
by Hanna
 


      スペース・スーパーハイウェイ
どこかしら
からだは浮きあがって
ハイウェイから天の軌道へ昇ったような
     か
絵の具で描いたようにぼやけるのは
山に沈みかけたお月さま

 空こえて無線が入る
 危難の惑星から救助信号
 それゆけ! そうして
 心は彼方

いつかしら
たましいに翼がはえて
ハイウェイから電離層つきぬけたような
定規で引いたようにすべるのは
時季はずれの流れ星

 時こえて無線が入る
 夜明け前の未来都市から爆破予告
 それゆけ! そうして
 心は彼方
by Hanna
 


          火星の早駆け
火星の空は
くるくるクリムゾン
つばさ無くとも Hey, hey
とびたてば 故郷は彼方

 駆けろよ 駆けろ
 息が花火と あがるよに
 天の野原は 澄みわたり
 凍った花が 咲きほこる

 早瀬の銀河をさかのぼり
 星となるまで 駆けるのさ

火星の夜は
ずんずんクリムゾン
あかり無くとも Go, go
突き進めば うかれ騒ぎ

 駆けろよ 駆けろ
 息で月さえ 沈むよに
 天の黄道 一直線に
 わたれば 誓いも よみがえる

 月のうつろう、
 月のうつろう、
 月のうつろう真夏の夜々に

 早瀬の銀河をさかのぼり
 星となるまで 駆けるのさ
by Hanna
 

§ 火星のうた


        火星の舟唄
漕げ、ビー ひけ、ツィー
聖王の舟 氷河をくだる
セ、メ、ウェ、 セ、メ、ウェ
敗走の月 昇る前に

 赤き大地に今こそ還らん
 まさに聖戦の時なるぞ
 いくさ神の名にかけて ジャハー・スァン、
 太鼓を打ちならせ 血の雨をふらせ

漕げ、ビー ひけ、ツィー
聖王の舟 都へ入る
セ、メ、ウェ、 セ、メ、ウェ
恐怖の月 昇る前に

 赤い我が妃を今こそめとらん
 まさに聖婚の宴の時よ
 いくさ神の名にかけて ラハー・スァン、
 風笛吹きならせ 血の杯をまわせ

おお 聖王の長きひげは赤く染まりぬ
血の月は赤き大地をてらす
漕げ、ビー ひけ、ツィー
セ、メ、ウェ、 セ、メ、ウェ

 赤い我が地に今こそ還らん
 まさに聖断の時なるぞ
 いくさ神の名にかけて バハー・スァン、
 野琴かきならせ 血の川となせ

漕げ、ビー ひけ、ツィー
最後にして永遠の凱旋なるぞ
漕げ、ビー ひけ、ツィー
最後にして永遠の婚礼なるぞ




   *ビー、ツィー:be は「漕ぐ」benn の、 
    は「引く」nn の命令形(火星語)。
   *セ、メ、ウェ:se, me, we「1、2、3」(火
    星語)。
   *敗走の月、恐怖の月:火星の衛星フォボスとデイ
    モス(戦神アレスの息子)。
   *スァン:an は戦神の名、jaar, laar, 
    baar は「猛々しき」「血に飢えた」「無慈悲
    なる」の意の形容詞(火星語)。
by Hanna
 


     火星のプリンセス  ──バローズに
黒野牛のマントにくるまれて
ガラスの靴よ 赤き姫
燃える瞳を宙に迷わせ
何を待つ

 花嫁は氷河に眠る
 死にたえた城のほとり
 夢を見る英雄はどこに?
 銀の牙持つ炎の竜は

 今は幻のほか思い出もない
 つめたい空よ

七色の枝の冠を額に
水晶の涙よ 赤き姫
魔法の宿る 指組み合わせ
誰を待つ

 聖王はついに還らず
 崩れおちた城のほとり
 訪れる英雄はどこに?
 この氷溶かす炎の竜は

 今は化石のほか同胞もない
 つめたい空よ

御座船の黄金細工
とりどりともるネオンの炎
映していた運河は白く死に
時のはざまで姫は眠り続ける




   *バローズ:火星シリーズの作者であるエドガー・
    ライス・バローズ。
by Hanna
 


          戦士よ…
とどろく雨の呼ぶ晩に
      お
聖剣帯びて 降りきたる
    かたき
数千年の敵をたずね
かなしき故郷を あとにして

 戦士よ 無敵の戦士
 灰色の雲たなびく果てに
 お前の安らぐ彼岸はありや

粉雪のたわむれる静寂の木立ちに
足取りは重く はく息はゆるく
血を吸い 水晶の刃も赤く染まりぬ
              つるぎ
今は妖刀となりし いにしえの剣…

 戦士よ 無敵の戦士
 灰色の雲たなびく果てに
 お前の夢みる暁はありや

 戦士よ 無敵の戦士
 氷河の都に眠る彼の人の涙も
 今は赤く染まりて…
by Hanna
 


         火星の恋唄
拡がる宇宙に魂の鑿もて刻みつける
この想いは消えることなく
時をこえ 知らぬたれかに伝えられてゆく

 かなしみよ――故郷の星の血の赤よ

どこからか 神々の唄が聞こえ
葬列は天の川に沿ってくだりゆく
    もだ
死して黙した河を
幾千年もはるかな春の日の思い出を胸に
眠るかのひとに星影のくちづけ

深まる宇宙に声なき声もて叫びつづける
この想いは絶えることなく
世々をこえ 知らぬたれかに引き継がれてゆく

 かなしみよ――故郷の星の海の青よ

 いとしさよ――故郷の星の麗しの姫よ

遠ざかる宇宙に想いのたけもて描きつくす
わが郷愁は失われることなく
わが思慕は薄れることなくさだめ
時空をこえ 彼方の予兆に運命を託す

いつの日か 神々の唄がよみがえり
英雄が天の川に沿ってのぼってくる
死して黙した呪縛を解きに
幾千年もはるかな春の陽をもいちど浴び
目覚めるかのひとに運ばれる記憶のくちづけ

 恋しきは――故郷の星の春の笑みよ
by Hanna
 


        もつれた毛玉
王女様のお気に入りは魔法の毛糸玉
くるくるほどけば七色の因果をつむぐ
床を波うち 猫らを誘う
(猫らはいつだって魔法使いさ)
白い塔の天辺の小部屋で
二つの月光 とけあってほんのりピンク色の夜よ

 くるくるほどけ 毛糸玉
 あやしく光って床をはえ

王女様のお気に入りの魔法の毛糸玉
あるときもつれた 誰にも誰にもほどけない
天井を漂い 猫らはしょげる
(猫らにはいつだって悪気はないんだ)
白い塔の天辺の小部屋で
どうしよう 星の配列が凶に変わる夜よ

 ぐるぐるもつれ 毛糸玉
 あやしく絡んでふくらんだ

王女様は氷のひつぎに寝かされた
もう誰にもほどけぬ運命のもつれ玉
そうして火星に冬が来た
これも昔の物語
 
by Hanna
 


       火星の王女、火星の月
 「ネヱ、ネヱ」
 と王女は青い猫に問う
 「星を渡って行ったのは
 いったいいつの日のことだったの」

王女の ラララ 瞳に
ナトリウムの溶液がたまる

 天窓にさす影
 誰かしら 月の使者
 いとしいひとの消息は
 今宵もわからない

王女の ラララ 瞳に
ナトリウムの雨がふる

月影 ルルル せつなく
王女に惹かれて身を砕く

 「ナゥ、ナゥ」
 と青い猫は泣く
 「王女はドライアイスのひつぎで眠る
 砕けた月を冠に」
by Hanna
 


        火星の丘に
火星の丘に
貴女とのぼったのは いつの時でありましょう
平原のまるいはてに
天の川つきささる夕べ

「運河のつきるまで川船漕いで
 地平から天の川へ のぼりましょうか」だが
 貴女は笑って そのすずやかな声が
 草むらにひとつひとつ露を結んだ

火星の丘を
貴女とのぼったのは いつの時でありましょう
氷冠の白いかなたに
ひしゃく星かかる明け方

「氷河のつきるまで竜橇駆って
 時の流れ出す門を くぐりましょうか」だが
 貴女は黙り そのバラ色の頬は
 永遠の氷室のなかに閉ざされた

火星の丘で
我待ちぬ 我待ちぬ 再び春来る時を
日々が死に 月が消えても 忘れえぬ
貴女の面影 胸に抱き

火星の丘で
我恋ふる 我恋ふる 再び春来る時を
日々が死に 月が消えても 忘れえぬ
          いし
草むらの露を誓いの宝石となして
by Hanna
 


       火星の恋唄 2
それは暖かな過去の春に
戯れる流れのほとりで起こったこと
季節は優しく 岸辺の砂はこまやかで
何もかもが はっきりとそれぞれのうた 歌っていた

 月の昇るまで あなたに
 千通りの愛 ささやいた
 あの甘やかな夕べ

あなたは静まる夜の縁にたたずみ
くちずさむのは英雄たちのバラッド
真紅の野牛のマントに 月長石の耳飾り
何もかもが つれなく私の悲しみをさそっていた

 月の沈むまでに あなたの
 くれたのは ただ一度のまなざし
 あの甘やかな夕べ

いま私は砕けた思い出の杯をつなぎ
予言のうたに願いこめて祈る
あなたが岸辺でくちずさんだ そのうたを
               もだ
覚えていたはずの流れも すでに黙してしまったけれど

 月の消えるまで あなたの
 予言のうたを 歌います
 かの夕べの思い出に

 そして来たるべき英雄の日々に
 私の思い 託すため

それははるかな春の夜に
若き流れのほとりで起こったこと

 伝われ 春の日の恋のきらめきよ
 川は黙し
 山々は氷をいただくとも
            あ
 伝われ 彼方の日のまだ生れぬ英雄の胸に
 岸辺は凍り
 山々は氷河にえぐられるとも

 伝われ かの人のただ一度のまなざしにかけて
 我が恋よ
 山々は氷河にくずれ消えるとも
by Hanna
 


      風のおどり(星の樹)
――生も死も越えておどりはつづく
夜空に再び輝きが戻るまで
意識の十字路に立ち 僕には
きみに告げたいことがある

 川が星々をのせてながれ
 海が星々をのみこんでねむる夜に

かつて魂が大地につながれていたとき
きみの想いははるか山脈を足下に天翔り
僕は翼が欲しかった
流れ星よりもはやい翼が

いま 僕は虚空に在って
きみの記憶によってようやくつなぎとめられている
きみの想いは根づいて
ひそかな地下流をまさぐっている

――生も死も越えて僕はおどる
きみを求めた星がもういちど 
夜空に撒かれて花と開くよう
祈りをこめておどり続ける

 海は星々を返し
 山脈はだまって腕さしのべる夜に

きみに告げたいことがある
ああ
嵐を呼ぶほどになった樹よ 銀の樹よ
僕には
きみに告げたいことがある
by Hanna
 


        火の星の
  火星より
  唄い続ける
  待つ人は誰──
          ほし
夜ごとさまよう赤い惑星を
胸にしまって旅ゆく人がいた
あの人は あの人は どこから来たの?
銀の海賊船に乗って
磁気嵐の日 やって来たわ
乙女らの花の雨 くぐりながら

 予言の英雄 待ちながら
 氷の床で 眠る姫がいると

季節ごとかがやく赤い惑星を
瞳にうつして旅ゆく人がいた
あの人は あの人は どこへ行くの?
竜頭の海賊船に乗って
蝕の日の凪に出ていったわ
乙女らの涙の雨 くぐりながら

 予言の英雄 待ちながら
 氷の下で 眠る河があると

 予言の英雄 待ちながら
 氷の中で 眠る都があると

  けれどもあの人は誰──
  火の星の 火の星の 炎の海賊
  火の星の 火の星の 炎の海賊
by Hanna
 

§ トラベラーズ・テイル


         旅人たちの物語
窓の下で秋の虫鳴けば
遠い星からの旅人たちを思う
夏の匂いの残るさやかな夜に
やって来たなつかしい人々のことを

 こおろぎたちは伝える
 赤き大地より来たる客人のこと
 星空すみわたる新月の夜に
 風変わりな唄をくちずさみつつ…

小雨の宵に秋の虫鳴けば
夢の火星からの旅人たちを思う
はるか氷河の谷より見送られて
やって来たやさしげな人々のことを

 こおろぎたちは伝える
 赤き大地のいにしえの物語
 灯りもかすむ霧深き夜に
 奇妙な呪文をくりかえしながら

影はどこに 影はどこに 旅する人よ
思い出のよすがも残さずとて
影はどこに 影はどこに 旅する人よ
そしていずこへゆきつかん
ふるさとはすでに記憶の彼方に
by Hanna
 


       TRAVELLERS NEVER LIE
いつの日も わたしを楽しませるのは
 トラベラーズ・テイル
旅人たちの物語
知らぬとて心閉ざしたまふな

 昔 この世ならぬ世界があった
 大きな災いがあった
 クリミナル・クラッシュ・クライシス
 人々は悲鳴をあげて
 呪った 神を魔をしのつく雨を。

いつの日も わが血をかきたてるのは
フェアリー・ファンタジー
妖精郷の御伽話
聞かぬとても目は見開きたまへ

 いつか この世ならぬ世界があり
 大きな幸いがあろう
 ファイン・ファッシネイト・ファンシイ
 人々は声を合わせて
 たたえた 神を魔をふりつむ雪を。

いつの日も 物語は定かならず…
河の流れのように
蛇の通う跡のように

 災いはいつ? 幸いはいつ
 クリミナル・ファッシネイト・イリュージョン
 すべては巡ったり絡んだりしているだけよ

いつの日も 私を安らわせるのは
旅人の物語
信じぬとて顔そむけたまふな

 ある日 この世がここにあった
 大きな混沌があった
 コミカル・コズミカル・ケイオス
 人々は夢に惑って
 嗤った 神と魔と荒れすさぶ風を。

 災いはいつも 幸いはいつも
 光と影のごとく 昼と夜のごとく
 すべては背中合わせで知らぬふりよ そうさ

いつの日も わが心の慰めは
旅人の物語
聞かぬと言はず耳傾けたまへよ
Travellers Never Lie…
by Hanna
 


          いろはうた
          み
異境のヴィジョンを視た
鼓動するノイズ
前世か来世の夢…
何を語りかけたいの わたしにはわからない
コトバを翔ばせて――風が呼ぶ

 長い長い長い階段
 火の河に銀のはしけ
 メッキの音楽が反響している
 命は匂えど 散り敷いて
 ああ地上は花びらのような想いに覆われる
 深く深く深く積もる

異郷の唄を聞いた
振動するイメージ
創世か末世の幻…
何を見せたいの わたしにはわからない
スガタを翔ばせて――光が招く

 暗い暗い暗い階段
 炎の淵に輝く小舟
 妙なる像が揺れては結べど
 どの世も常 かつ常ならぬ
 ああ一瞬は永遠へとつながり回る回る
 ぐるぐるくるくる巡る

 果てへ果てへ果てなく階段
 よもつひら坂いつ越えて
 はるかにたどる埋もれた道よ

  くら きざはし
永い昏い階梯果てしなく
           うつつ
異層へ夢幻へ 巡り巡って現へ今へ
深き夢視し酔いの中
色は匂えど音なきを
        つとめ
思いやるのは我が使命

 ――地上ではクラッシュがあった
    人々は逃げた
    深層心界へ
    そこは夢の火星
    それは旅人たちの物語――
by Hanna
 


        魔界のアリス
千夜を超えた旅の夜
運命の星が昇るよ、欠けたまま
金の髪、銀の肌
乱れ散る万の花びら
変幻自在のこの界に
         さだめ
足ふみいれたは、誰が宿命

 わらわは魔界のアリス
 ああ運命の赤い星

千世を超えた旅の夜
運命の月が満ちるよ、潮騒とともに
  くち
赤い唇、赤い瞳
乱れ散る真白の雪花
変幻自在のこの界に
       
転生したのは、誰がためぞ

 わたしは魔界のアリス
 ああ運命の双の月

めくるめく花火、はじける夜空
胸に満ちてくる前世の想い
         ブラックホール
落ちゆくのは、深い時空井戸

 われは魔界のアリス
 ああ運命の赤き星の姫
by Hanna
 


       マッド・サイエンティスト
          ララバイ
細胞分裂の効果音を子守歌に
弾むよ試験管 チクタク・ディジタル・オ・クロック
素敵な反応さ 赤、青、灰、Bang!
誰もあんたを責めてるわけじゃない

 Hey, Darling
  He's such a mad scientist
 夜空に魔法の杖で最終兵器の星座を描く
 錬金術師さ yeah
           サ プ リ
宇宙開発のニュースを栄養剤に加え
煙るよ紫煙 スパスパ・ヘヴィ・スモーカー
素敵な曇りガラスさ micro, macro, mic, mac, mix
誰もあんたを褒めてるわけでもない

 Hey, Darling
  He's just a mad scientist
 誰だって子供の頃は謎々や渦巻きが好きだった
 異端の魔道士さ yeah

一人の天才がいれば宇宙はつくれる
百人の mad scientists でも宇宙はつくれる
無数のチリにだって宇宙はつくれる
だから いいじゃないか こだわるなよ

 Hey, Darling
  He's one of the mad scientists
  人生の半分をビーカーで煮立てちまった
 黒コゲ飯さ yeah yeah yeah

火星に行こうよ
彼の夢の星へさ
安らかに眠れるように…
けどその夢は悪夢だよ
それもまたよし――こだわるなよ

(考えたこと あるだろうが
神さまだって mad scientist
それ以外の何者でもないよ
だから やつは パリパリの先祖がえりさ
プロトタイプだぜ)
by Hanna
 

§ ほーい、西行き


        虚無神よ聞かせたまえ
面舵! 巻いた綱 はためく金の帆
おいらが行くは まぼろしの河よ
切々と かもめ啼けば
セイレンの呼び声のようさ
星も涙ながす

 深紅のターバンが目に入らぬか?
 耳の輪っかがキラリと光るのが?
 夜だとて
 夜だとて
 星のあかりに光るのが

我が名はマルティス・ヴィキンガス
宇宙にとどろく 稲妻よ
一味徒党は強者ばかり
太陽風の船乗りさ

ヒスイをはめた海賊旗かかげ
            そら
おいらが行くは 無窮の宙よ
漠々と 闇広がれば
故郷もどこかに眠る
無量の星の中

 黒い眼帯が目に入らぬか?
 とりどり塗った楯に覚えはないか?
 闇だとて
 闇だとて
 星のあかりに光るのが

我が名はマルティス・ヴィキンガス
 ツォムート・ツェオン
顔無き虚無神も聞かせたまえ
一味徒党は伊達者ぞろい
アルンエルス
夢の翼の船乗りよ

闇黒の記憶の海を漂いて
夢に故郷の星を求めつつ
この唄うたうは 名をビルド・ガ
丈高きナヴァンの子と名乗る者
by Hanna
 


  ハイ・ブリーセイル ――海賊たちの夏
夢見たことが あるかい
まっさおな海原をただひとり進む
海賊船を
金の耳輪は 船乗りのしるし
太陽にきらめくよ

 僕がうたうのは その歌さ
 故郷を離れ 幾年もたったが
 まだ見ぬ 彼方の島影よ
 ハイ・ブリーセイル、ヘイ,ホー!
 進め、やよ、進め

夏が来て 行こうじゃないか
まっかなあごひげの船長は隻眼
海賊船さ
内海で奪った思い出の金銀宝石
船倉できらめくよ

 僕がうたえば そら、嵐さ
 外洋に出て 幾とせも過ぎたが
          まがうた
 まだ聞かぬ 彼岸の魔歌よ
 ハイ・ブリーセイル、ヘイ,ホー!
 進め、やよ、進め

甲板を雨が洗い
帆げたに星くずがからまる
海はしだいにはりつめて
まっさらに 光りだすさ

 僕がうたえば ほら、ご覧
 永遠の海峡を越え 幾世も越えて
 やがてたどる 真夏の潮道よ
 ハイ・ブリーセイル、ヘイ,ホー!
 霧の中の幻の土地よ

 ハイ・ブリーセイル、ヘイ,ホー!
         おか
 海賊たちの夢の陸よ





   *ハイ・ブリーセイル:アイルランドの伝説で、西
    の海にあるという楽土。「ブラジル」の国名のも
    ととなった言葉だそうです。
by Hanna
 


          雲の果て
山並みで生まれた雲の
旅する姿の悠然よ
木々をぬい光る日差しと
それを揺らせる秋の終わりの風

 ハイウェイをゆっくりと車は旅し
 流れに浮かぶ小枝のようだ
 海は―― 海は向こうにあって
 ああ
 われらの郷愁をさそう

海鳴りの彼方へとけゆく雲の
消える姿の安らぎよ
坂道に散り敷いた落ち葉と
それを押し流すにわかな冷たい雨

 リボンのようにくねるハイウェイの
 向こうの港にだれが居るかしら
 海を―― 海をゆくひとの
 ああ
 甘くなつかしい髪の匂い

雲の果て  旅する者たちの
思いはつきぬ 星々の天に在るごとく
ハイ・ブリーセイル、ヘイ・ホー、
今は冬のとばくちから。
by Hanna
 


            海ゆけば
    みなわ
飛び散る水沫 星とまごう夜
羅針を天に合わせ 進めよ進め
滾る想いの潮道たどりて
ゆきつくのは 約束の地よ

 追い手に吹かれて 海ゆけば
 白き鴎も 飛びちがう
 彼岸まだかと 啼きかわす

砕ける波花 雪とまごう朝
   はて
船首を涯に向け 進めよ進め
けぶる記憶の海霧ついて
           ほし
ゆきつくのは 伝説の惑星よ
 はやて
 疾風に乗りて 海ゆけば
 白き鴎も飛びさわぐ
 彼岸遠しと 啼きさけぶ

 舵輪めぐりて 海ゆけば
 帆布はためき 海ゆけば
 想いの果てるその涯に
 神々の世や あるとなん

――海賊たちのエピローグ
by Hanna
 

*ふろく 火星の祈祷歌

「砂漠に座すは顔なきツェオン、無の王なり。
 天におわすは嵐よぶハラ、人の魂を喰らうとなん。
 影をしるすはズヌ、暗黒の司なり。
           け らく
 土笛吹くはナヴァン、快楽の王。 
 涼気もたらすはタータ、オアシスの母よ。
 運命を舞うはウー、みやびなる乙女。

「始まりの時に、ヨヒージャは月の井戸から水を汲み、
泥人形をばこしらえた。それからヨヒージャは太陽の炉
でそれを焼き、命と魂を吹きこんだ。
「その頃よりインギタは氷河の上に寝ていた。その頃よ
りザン・スェダは雲を牧し星を観た。
「やがて人形は目覚めてこの世のありさまを知った。こ
れぞスァン、我らが父祖よ。

「スァンはタータに養われ、ウーに恋をし、ナヴァンの
笛に合わせて踊った。スァンはツェオンに、ハラに、ズ
ヌに戦いを挑んだ。おお猛々しきスァン、砂漠の赤き獅
子よ。戦さにては雄々しく、恋にては甘やかで、眠りは
健やかなるスァンよ。
「我らはうたう、ツェオンに挑みし無慈悲なるスァン、
ハラに挑みし猛々しきスァン、砂漠の赤き王よ。
「我らは彼のごとく生き、彼のごとく死ぬる。タータに
養われ、ウーに恋をし、ナヴァンの笛に合わせて踊る。
ツェオンに、ハラに、ズヌに戦いを挑む赤き獅子の子よ。
願わくば我らもまた戦さにては雄々しく、恋にては甘や
かで、眠りは健やかならんことを。我らが父祖スァンの
ごとく。」

                (火星の祈祷歌)
by Hanna
 


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