はるまちこちょう 春待胡蝶
海を越えて渡ろう 蝶たちの故郷に 花の香も ねむる午後 風の足あとをたどって わたしは空になる わたしは空になる ブルーバードをうむ春の空になる 海を越えて渡ろう 蝶たちの島へ 若い芽の ひらく朝 風の余韻をたぐって わたしは空になる わたしは空になる ブルーバードをうむ春の女神になる
世界樹のアヴェマリア
占星宮の窓から あなたの白い光がみえます あなたは凍れる世界樹 天をもつらぬく愛のつらさで 宇宙すみずみをそっとからめる 「玉の緒よ 絶えなば 絶えね…」 深海青の扉から あなたのほそい光がみえます あなたは白き女神 一夏の蝶のようにはかない恋を そっとその手にとまらせる *この絵の女性像は、式子内親王がモデルだ ということです。
午 睡
姫ぎみは春の星座のなか みどりの野べに眠ります すくいとれない深い海に ただよう泡の夢をみて 姫ぎみは目ざめず寝ています ふわと髪ゆらす かそけき風がとおっても ぼくのどの愛でも とてもとても みどりにうもれた姫ぎみの深い青い眠りはさませない
星の蛾の
星の蛾の羽化する夜に 咲きにおう花々は流れて空に溢れる 夜のとばぐちから放たれた夢に 白い鱗粉を星と散りばめて ああ 夢みる草々の吐息はあまくあまく むすばれて 夜明けのみえる海まで流れゆく
暮 春
悟りの花 白く咲くのを待ちながら 時計の停まった部屋に 眠りがただよう午後 わたしのこころは蔓草模様に染まって 音もなく夢にのびてゆく タイサンボクが 白く咲くのを待ちながら 天井裏を おさない日々のこだまがゆきかう午後 わたしのこころはつづれ織の曼陀羅にえがかれて 箪笥のひきだし奥深くにしまわれる だれか 千世を経て訪れて 春草のからまるわたしの部屋で タイサンボクの香りのしみた 絵巻物を見つけたら ま白き花 におやかに咲き誇り 鐘の音はふたたび黄昏をどよもし 目ざめたわたしはのびをして 庭へと出てゆく
我 女 神 〜Big Bang
たね ひとつぶの種子から 星々のかなたまで わたしはうみだし この手でいだく ひとつの閃光から もえつきる巨星まで わたしはうみだし この手でいとおしむ 宇宙というまるい体内に みちてひろがる 不思議な力よ 星々をうみ 精霊をうみ すべてをうみ いだきつづける わたしは女神 あおい虚空をよぎる 流れ星の天馬も わたしのたなごころで やすらぐ… ひとつぶの種子の発する ひとつの閃光から わたしの宇宙はうまれ わたしは宇宙をいだく
香料島の女王
めったに人のたどりつかぬ、 内海の島々を治めるのは 仙術をよくする女王。 船は花や蜜や香草や 羽毛やコハクや貝をつんで 湾へやって来る。 香料島からくる船だ。 男たちは女王を夢みて酒をくみかわし、 歌うたいはあこがれのバラッドをかなでる。