海洋浪漫 Ocean Romantic


        ヒューリィ・ザ・ホエル
  
くじらのヒューリィは旅に出た
旅に出た
くじらのヒューリィは
旅に出た
  “海は どこまであるんだろ”
くじらのヒューリィは旅に出た

くじらのヒューリィはかもめに訊いた
かもめに訊いた
くじらのヒューリィは
かもめに訊いた
  “海は どこまであるんだろ”
かもめのダンシィは知らぬと言った

くじらのヒューリィは泳いでった
泳いで行った
くじらのヒューリィは
泳いでった
  “海は どこまであるんだろ”
くじらのヒューリィは泳いで行った

くじらのヒューリィのあとを追って
あとを追って
くじらのヒューリィの
あとを追って
  ぼくも 小船で波越えて行こう
ぼくもヒューリィと旅に出た

  “海は どこまであるんだろ”
ぼくとヒューリィはどこまでも
by Hanna
 


          帰 郷
色あせた
海図をたどり
さびついた
羅針盤をながめ
      かもめ
わたしは白い鷗を案内人に

空と海の
境目あたり
重なりあう
空気のむこう
わたしは渡る蝶たち案内人に

 壮大なるカーテンを寄せ
 いきなりひらけた
 視野がまぶしくて

 はっとして吸いこんだ
 潮の気体
 心の中で
 反応式が完成して

もう昔の
地図をたどり
旅立ってきた門へ
ふたたび向かう
自ら折った枝 たどりながら

遠い日の
思い出ひろげ
もう古ぼけた
海
なつかしくて

 はっとしてあふれ出た
 潮の液体
 頬をすべって
 反応式 くずれさり

幼い頃
あとにしてきた
楽園の
扉の前に立ち
わたしは夢だけを紹介状に

遠慮がちにノックする
by Hanna
 


       夏の海の思い出
今日の海は灰色で 波が少し荒いです
今日の空も灰色で 雲がどんよりおおってます
うちあげられた 海草が
しとしと 雨に うたれています
忘れられた さくら貝
雨にぬれて 光っています

 静かな秋の雨の朝
 浜のヨットが泣いている
 だれもいない海岸に
 しとしと雨が降るだけ

 ああ 冷たい雨が降っている
 ただしとしとと降っている
 思い出はみんな
 泡だつ海へ還るのです

今日の海は灰色で 波が少し荒いです
今日の空も灰色で 雲がどんよりおおってます
ぬれた砂に やどかりが
歩いた跡を つけながら
夏の思い出 背負って
海に 還って いきます
by Hanna
 


      ひとみの中に海が見えたら
まぶたに陽ざしはあたたかく 窓辺に鳥の声
忘れた夏がよみがえる
静かなひととき

 誰もいない浜を
 両手にいっぱい荷物を抱えて行く
 見送りはいらない
 ただ幻を求めて船出するから

ひつじ雲が網の目によぎる 木の間に鳥影
いつかの旅がよみがえる
高い空

 荷物はがんじがらめにしたものばかり
 汽笛はいらない
 ただそっと離れて行くから

ひとみの中に海が見えたら
ひとりそこへ進んで行く
世界は背後にしずみ
きのうはもう見えない

 行く手はかすんでいる
 陸地が消えるとすぐに
 あらしがやってくる

 荷物を捨てろ
 木箱は暗礁にくだけ
 思い出がばらばらと散る
 あらしとわたしの下で
 ゆらめきながら水底にしずみ
 魚のあぶくと一緒にかすかなきしみが伝わるだけ

ひとみのおくに見えた海
ひとりそこへ帰って行く
世界はとびらのように開け
ほんとうの旅が始まる

 あらしがやんだ空の下
 もう何もない船に
 すっかり変わったわたしがいる

 へさきに立ち
 大声で海のうた うたいながら
 波にまかせ どこまでも
 船は進んでゆく
by Hanna
 


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