夢幻劇のロメオ


マキューシオ:今宵の騒ぎで、まだ星々に引っかかっている、あの
 感応力ってやつが、落っこちてくるだろうさ。
         ――シェイクスピア『ロメオとジュリエット』
 
 *そもそも「夢幻劇」とは、プルースト『失われた時を求めて』
  に出てきた言葉ではなかったかと思う。


§ 夢幻劇


         夢 幻 劇
 うつつ    たわごと
 現と夢と 虚言と愚行
 へだてる薄い壁 虚空に架かる
 
 幕が上がる
 七色ライトの夢幻劇
 剣ぬいた英雄は
 強烈な落日のライトあびて――
      ペイジェント
 真夏の宵の野外劇
 アーク灯に群がる観客たちの人いきれ
 むせかえる闇のざわめきを
            めまい
 高みから見おろす役者の眩暈
 
  Oh, Romeo
  いかに この世が めぐっても
  変わらぬ歌が ありましょか
  それなら その歌 いつまでも
  星の騒ぎに のせましょか
 
 幕が引かれる
 一息に消えるアーク灯
 舞台は一転 底なしの奈落
        むすう いのち
 闇にうごめく夢数の生命よ――
      ペイジェント
 真夏の宵の野外劇
 狂乱の拍手に血が騒ぐ
 真実なのは舞台の上のかの役者
 当惑顔に剣ひっさげた英雄そのまま
 
 闇にのまれた観客たち
 今よりまことの幕が上がる
 てんでに芝居は展開する
 剣ふるい 愛しあい
 血を流し 寄り添って
 嘆きの面に 笑いの面
 すべてを覆う 狂気の面
 
  Oh, Romeo
      な
  いかに 汝が歌 変わらねど
  この世は 巨大な 回り舞台
    へんげ
  七色変化の 木馬の上で
  星の騒ぎに 酔いましょか
 
 現と夢と 虚言と愚行
 へだててゆれる薄い幕
 殺人の返り血あび 恋人の睦言吸って
 七色変化に照り映える
by Hanna
 


        魔法のメガネ
屋根のあいだにぶら下がる
今夜の月はオレンジよ
ぐらり ぐらぐら 道の彼方は
どこまで続く 夜明けまで
 
魔法のメガネで 魔法のメガネで
のぞけば街は 燃えあがる
 
秋の来ぬ間に逃げ出した
あの姿の見えぬ駆け足は
ぱたり ぱたぱた 角めぐり
めぐり迷って 夜明けまで
 
魔法のメガネで 魔法のメガネで
のぞけば街は 浮きあがる
 
ダンスしながら 行きましょう
楽屋裏から月までも
苦しくても眠たくても止まってはダメよ
 
魔法のメガネで 魔法のメガネで
のぞけば余興の猿芝居
街の夜明けの夢幻劇
by Hanna
 


        旗の金の星をおろせ
木枯らしにも踊れぬままに
わたしの窓辺は日ごと闇に沈んで
細い月さえ見えぬとき
灯りが一つずつ消えてゆく夢を見て
急に叫びだしたくなる わたし
 
 Romeo 墓場のRomeo
 わが骨 かきいだき 嘆いておくれ
 幕の裾に火がついて
 見えてはならぬ楽屋が暴かれる
 
降誕祭にも歌えぬままに
わたしの眠りは夜ごと冷たく汗ばみ
朝やけの薔薇さえ凍るとき
          ときわぎ
枝の先から枯れてゆく常盤木を見て
急に逃げだしたくなる わたし
 
 Romeo 停車場のRomeo
 最終列車のベル 鳴りやまぬ
 奈落からぼろぼろの竜 よみがえり
 客席に向かって飛ぶ
 
 Romeo 帆柱の上のRomeo
 天を指す旗の金の星をおろせ
 嵐も凪もいちどきに 今
 わたしの鼓動におしよせる

醒めるなら 醒めるなら 醒めるなら
 
醒めるなら 今のうち
・・・・・・早く!
by Hanna
 

§ 破滅と再生への思想


          召還の呼びごえ
リイララ 細やかに鳴りそむる
夜をこめて飛ぶ鳥たちの羽ばたきの向こうから
マストの上ではオレンジの月の残骸

 そしてその リイララ 音が
 ああ 脳天を貫いて地中深く闇を呼びさます
 古い古い諍いを思いださせる

リイララ よこしまな銀線の響きよ
夢縛る魔の歌は暁の裏側から
波間にくずれるオレンジの月の断片

 そうだその リイララ 響きが
 ああ 胸を貫いて意識深く闇を呼びさます
 古い古い敗北を思いださせる

目ざめよ! リイララ
戦いの竜よ
夜のくびきを ひきちぎれ

飛びたて! リイララ
戦いの竜よ
あした
朝の鐘をも うちくだけ

      なぜ
――ああ 何故 闇にもどらぬ
休息を忘れた魂たちよ
リイララ 夢にまかせ
リイララ われらが翼下に
きたれ リイララ つどえ リイララ
リイララ リイララ リイララ――
by Hanna
 


           復活の夢
 とき
時間の流れがねばこく水飴のようで
空がこんなにも白いと
また
心に浮かぶ思いがバターのように溶けて
透明な重い水底に沈むと
            おお
 雨のなか よみがえる 巨きな者がある
 大地を揺り動かし
 風をおこしふるえる
 大いなるいのちがある

海がかたく凍りついたように黙りこんで
歌も調べも忘れられたとき
また
人々があまりにも白くはかない骨を
灼熱の大地に散らすとき

 陽炎のなか よみがえる 太古の者がある
 天空を裂き
 海をのみほし 泡だつ
 いにし
 古えのいのちがある

おお 僕は そのような誰かを呼びながら
じっとりと枕辺に汗をかいて目を覚ます
外は今日から
うつくしい春だ
by Hanna
 


          カーニバル
万国旗、はなやかにパレード
末世幻想カーニバル
悪徳政治家に白い花輪を
世も末のあやかしカーニバル

 ここ数年、変化らしい変化もなく
 革命思想も錆びついた
 目抜き通りに金月の昇る今宵は
 DA DA DA DANCE, DAN DAN DANCE

仮装行列、狂気の踊り手たち
地球終末カーニバル
悪業科学者に環礁の首飾りを
末の世はかくありなむカーニバル

 ここ数世紀、進歩らしい進歩もなく
 成長曲線も色褪せた
 日付変更線に金月の架かる今宵は
 DE DE DE... DESTRUCTION

宇宙遊泳、かしいだ時空
ビッグクラッシュ
大崩壊カーニバル ノヴァ
臨界の銀河系に白い新星のブローチを
次の世はまさきくありたしカーニバル

 ここ数百万年、膨張らしい膨張もなく
 赤方変位も青ざめた
 天の河に金月の沈む今宵は
 RE RE RE REBIRTH! REBIRTH PARTY

進め GO GO GO 時空転位へ
たたえよ LO LO LO ブラックホール
わたしたちは存在を超える

歌おう LA LA LA 復活の賛歌
踊れば HO HO HO 魂の王国
わたしたちは生まれ変わった

 この夜はカーニバル
 絵の具箱ひっくり返したような色の洪水
 きたる世はカーニバル
 ホワイトホールからあふれ出る星の洪水
by Hanna
 


          終末のFantasy
 滅ビノ 唄ヲ 聞ケ
    よわ
 ソノ夜半ノ 鉛色ノ 月下ニテ
 おおき   ふね
 巨大ナ 帆船ノ 迎エヲ待テド
 哀シ 狼ノ 吠ユルバカリナリ

  おおわだ
 大海は 大地から
 黒い空は 地上から
 解き放たれて 狂いたつ
          うみどり
 叫ぶのは 孤高なる海鷗よ

ト・キ・ノ・Signal・ハ
  ア・オ・ク・カ・ワ・リ・ハ・ジ・メ・ル

 怪竜は 太古から
 神々は 眠りから
 今 目醒めて 次の夢に遊ぶ
 もだえるのは 孤独なる現世よ

ク・ウ・ノ・Silence・ハ
  コ・ワ・イ・ホ・ド・ミ・チ・テ・イ・ル

 嘆キノ唄ヲ歌エ
        ちち
 ソノ幻影ノ 乳白色ノ都市ノ前デ
 たくみ
 精巧ナ装置ノ 作動ヲ待テド
    サイレン 
 空シ 魔女ノ 啼ルバカリナリ

 思考は 空白へ
 秩序は 混沌へ
 解き放たれて 狂いたつ
 大陸断絶の 時が来る

     プレート
 蒼海は 地殻から
       コア
 マグマは 地核から

 月は 地球から
 地球は 太陽から
 そして太陽は 銀河から

 ああ森羅万象は 空間から

 解放ノ唄ヲ聞ケ
    くびき
 全テノ軛ノ消失ノ時
      おおい
 ソハマタ 偉大ナル変化ノ時

 時の翼をかかげよ
 孤高なる海鷗
 超えてゆけ 千万の軛
 砕け散る 波を眼下に

 大海は 重力から
 神々は 神話から
 今 解き放たれて 高く舞う

ト・キ・ノ・Signal・ハ
  ア・オ・ク・カ・ワ・リ――
ク・ウ・ハ・Silence・ヲ
  ミ・タ・シ・フ・ル・エ――

――ソ・シ・テ・ハ・ジ・マ・ル・Fantasy
by Hanna
 

               とき
          終わりの刻限
全オーケストラがうたい
狂気のヴァイオリンの弓かきならして
秒針は一歩一歩進んでゆく
尖塔の頂点
天の星 指すところ

海は熱湯のように泡立ち
灼熱の太陽は丸ごと転げおりて
砂は一粒一粒落ちてゆく
真空をつくりながら
街では16ビートのブレイクダンス

 この星の滅びの刻限
 多くの想いが運命を伴奏した
 接近偏移の劫火
 青く燃えさかる

最上層 うすれゆくエーテルの中で
きざはしの崩れ落ちる前に
恋人たちは 駆けのぼり
夢幻の宇宙へ 漂い出てゆく
時空転位のベルが鳴る

 占星師がぎこちなくめくれば
 どのカードも真っ黒になっていた
 呪術者の水晶玉は
 千もの光を一点に結び
 音もなく砕け散る

 おお 最期の予感

天から贈られた翼の破れる前に
恋人たちは 手に手をとりあい
夢幻の時間を 超えてゆく
時空転位のベルが鳴る

高く低く高く!
時空転位のベルが鳴る
by Hanna
 


    RIDE THE DRAGONS' WINGS 〜英雄伝説〜
白銀の尾根こえて
戦いの竜たちは空を虹に染める
永い永いあいだ 洞窟の暗闇で
主もなき宝を護ってきた彼らは
今ふたたび 黄金に輝く翼広げて
 
 Ride the dragons' wings
 As the ancient kings
 人はみな 古代伝説の中に生きている
 
――舞台装置は完璧
  何もかもととのっているよ
          ヒーロー
  さあ ふたたび 英雄の復活
 
鮮血の大地をこえ
時間の大河は紅く流れ過ぎる
遠い遠い以前から 休まず単調に
主もなき空間をつきぬけてきた河は
        みのも
今ふたたび その水面 夕陽のごとく染めて
 
 Float out into the air
 To take the lion's share
 人はみな 古代伝説を生きる虚影
 
――舞台装置は完璧
  何もかもととのっているよ
  さあ ふたたび 英雄の復活
  いくたびでも 英雄の復活
  くりかえし 英雄の復活
by Hanna
 


      頭蓋天球 THE SKULLDOME
右向きに寝れば 僕の脳は
右耳の上にたまる
重たい泥のよう
そして左耳を頂点に
頭蓋は ひびわれた天球面を形成するのだ

天蓋の下 おどるインパルス
僕の夢想につれて きらきらちかちか

 死にゆく花よ 風の中でふるえる
 おまえはもう 波の音を聞いたか

左向きに寝返りうてば 僕の天球は
磁気逆転を起こす
破壊と再形成
そして右耳を頂点に
かつての地底が ひびわれた天球面を形成するのだ

天蓋の下 おどるインパルス
僕の妄想につれ ふらふらもやもや
     いのち
 死にゆく生命よ 霧の中に横たわる
 おまえはかつて 波の音を聞いたか

 あの 彼岸を洗う 永遠のリフレインを

立ちあがり歩き出せば 僕の脳は
目のところまでたまる
つめたい瀝青のよう
そして耳から耳へ地平が
てっぺんに 宇宙線ふりそそぐ空っぽの天球面。

幕を下ろせ 芝居は終わりよ
かたまって沈黙する 僕のインパルス

・・・ ・・・ ・・・ ・・・
沈黙するインパルス。
by Hanna
 


        シヴァ神の踊り
泥の上 流れる河に
うつる黄金の月 ドゥン、ドゥラ、ラドゥン・ドゥ
欠けては戻り また欠けて
流すは血の涙 大地うるおす
 
 天の踊り場で
 踊れ、シヴァ神、足踏み鳴らせ
 いのち
 生命リンリン 鈴と鳴る
 
泥の中 もがく魚らを
網で追う人々の歌 ドゥン、ドゥラ、ラドゥン・ドゥ
肌は大地の色 髪は枯れ草
歯は白く 魚肉 喰らうよ骨まで
 
 川面の光の狭間で みて
 踊れ、シヴァ神、御手打ち鳴らせ
  わまわ       
 輪廻しくるくる 日輪とめぐる
 
       おや   しかばね
泥の下 眠る祖先らの屍を
踏んでゆく 我らは子よ ドゥン、ドゥラ、ラドゥン・ドゥ
倒れては生まれ また倒れ
         がく
そのあわいに笑い 楽かき鳴らす
 
 虚空の糸のうえで
 踊れ、シヴァ神、月光あびて
 星は砕けて また流る
 
 踊れ、シヴァ神、足踏み鳴らせ
 生命リンリン 鈴と鳴る
 
 リタ
天則よ! 我は壊し また創る
泥人形のごと いくども いくども!
by Hanna
 


        さよなら、アデュウ
世界が消えるなら
消えそびれた魂は
ロッカーに片づけられるか

遠い空の蓋を開けて
どろりと血濡れた太陽を
つかみだしたら

時は停止して青信号を待つしかない
そのあいだ 神々の時間がよみがえる

歩けば遠く
眠れば早い あの坂道
丘の上から
太初の海が見えるかしら

魂が消えるなら
保管していたキイは
どぶに投げ捨ててしまうか

遠い夜の蓋を開けて
かさかさした硬い月を
つかみだしたら

飲み下せば苦しく
夢見ればあまりに甘美なあの酒精
酔いのまにまに
太初の海がかおるかしら

 わたしはロッカーから数冊の魔法書と
 消えかけた魂を取り出す
 その他のことに構っちゃおれない
 赤方偏移の断末魔の消える前に
 太初の海へ還るから

 さよなら、アデュウ、
 また来世
by Hanna
 

§ DREAMTIME


       夢幻紀 ――DREAMTIME
大地に魔法の薫る昔
幻力持つ野性の者たちの踊りは
猛々しく すさまじく
乾いた夜の砂 踏み
両腕を天にさしのべけり
 
 都市が夢に崩れ
 巨大な雑草があたりかまわずはびこって
 DREAMTIME
 夢幻紀の景色がよみがえる
 そこここに踊る 太古の者ども
 狂おしく 激しく
 けものたちのごとく
 
大地の記憶の戻る今
幻力持つ野性の者たちの唄は
深々と くりかえし
大地をゆるがし
蒼海を岩だらけの浜に刃向かわす
 
 文明が闇に消え
 荒廃の後 うるおいの雨のとばりが上がれば
 DREAMTIME
 夢幻紀の夢がよみがえる 
 声あわせ唄う 太古の者ども
 狂おしく 自由に
 花々のごとく
by Hanna
 


        霧の故郷 Foggy Home
トルマリーナの精がスキップするよ
夢に見たよな魔法のダンス
もう起きなきゃ はやくはやく
霧の故郷に帰ってきたよ

ほら あの時さよなら言った灯台守も
流れ星に乗って遊んでいたサーベルタイガーの仔らも
みんな元気で「ようこそようこそ
夢幻時代の夢へ、再び!」

故郷じゃ今が今 サヴィンヌの祭よ
赤い鳥は青く 青い鳥は白く
ぐるぐる回っては霧をふりまく
真ん中でごうごう 火はさかん

ほら 私も貴方も霧にくるまれ
見えない 自分の目で何も何もなんにも
みんな踊れ シップ・ルゥ、シップ・ルゥ
夢幻時代の夢へ、ようこそ!

この夜の 明けるまで
この火の 燃えつきるまで
   いのち
そして生命の消えるまで

目を覚ますには はやいはやい
神々の幾千億万兆京の夢で世界は息づく
霧さえも踊り狂う 赤や緑やもも色に
サヴィンヌの夢は決して消えない
サヴィンヌに消えた者は決して戻らない

ほら トルマリーナの精と踊ろう
流れ星に乗ってサーベルタイガーの仔が帰ってきた
霧は虹色 シップ・ルゥ、シップ・ルゥ
夢幻時代の故郷へ、ようこそ!
by Hanna
 


       ドリーム・ドラゴンの飛翔
乳色の闇に沈んだ都会から
特急列車のようなきしりをたて舞い上がれば
夕焼けはおれの炎のようだ

 平和な平和な平和な小春日和は
 おれに幼い頃を思い出させる
       しだ
 からみつく羊歯や木の根や
 腐った豊かな土の匂いを

梢の先にだけそよ風が吹いて
来るはずもない春を告げ知らせているのを見れば
陽光はおれの目玉のようだ

 しずかなしずかなしずかな小春日和は
 おれに最期のことを忘れさせる
 轟音に崩れゆく街や
 泡立つ海や 逆流する河のことを

遥かな夜空に聴いた
九層天の壮大な楽の音は
次第によじれ ゆがんできたが
それよりも大きく遥かな至上神を
おれは知っている

彼の神こそ いっさいを生み哀しみ給う

 最後の最後の最後の小春日和は
 おれに次の時代のことを夢想させる
 めぐりめぐる銀河時計の中で
 何度でもやってくる世々のことを

乳色に眠る真昼の都会から
交響楽のような和音とともに舞い上がれば
蒼天はおれの鱗のようだ

遥かな明け空に聴いた
       オペラ
三千界の壮大な歌劇は
次第に終幕に近づいてきたが
それよりも大きく遥かな至上神を
おれは知っている

彼の神こそ いっさいを消し笑い給う

またひとつ 神々の夢が終わる
またひとつ 神々の戯れが終わる
おれの銀の鱗、赤い舌、金の目は
痛いほどそれを感じている

舞い上がろう おれは   み
天より遥かにおわす神々の御使い
 ドリームタイム  み
夢次元の看取り手

またひとつ 星がくだける
またひとつ 神々の夢が消える
by Hanna
 


        リバース・パーティー
カシ・バーン 終末の声すれば
ぼくはすぐさま 殻くいやぶる
今度こそ 今日こそは
ランラ・ル・レイ 飛ぶぞかなたへ

 充電、済んだし
 世界も消えた
 そろそろ来るぞ、復活の晩

カシ・バーン・ラ・レイ ぼくのつばさに
銀月の光 てりはえる
今宵こそ 今夜こそは
ランラ・ル・レイ 飛ぶぞ天まで
ランラ・ル・レイ 力のかぎりに
by Hanna
 

§ 暁の星


 ルシファ! LUCIFER
   ──暁の子、明星よ、汝いかにして天より隕ちしや(旧約聖書)
夜明けのたなびく雲は切れて
黄色い陽が悪業の大地照らせば
しめやかな・ひそやかな・忘我のおののきも
あばかれた宝蔵のごとく
すさんで・かわいて・清潔に
 
 暁よ もどせ 混沌の闇に
 変わりゆく月の下
 寄せひく潮にひたされて
 流れ出る ひとすじの神々しい血
いけにえ
生犠の受納された祭壇はぬれて
やさしい雨が傷ついた大地に涙すれば
あざやかな・におやかな・しみいる緑が
病みあがりの都会をおおいつくす
こうばしく・生気にみち・あたたかに
 
 黄昏よ 告げよ 静かな夜を
 めぐりゆく星の下
 さまよう人々の胸をこがし
 燃えてとける さんぜんたる灯り
 
それは ルシファ 夜空の黄金の血
はくめい うすやみ
薄明と薄闇をつかさどり
神と魔をひとつにする
 
ルシファ! ルシファ!
我が祈りを聞け
すべて すべてのもの 太初の海へ
     もだ
夜明けの黙した地平の彼方
今日も昇るは恥知らぬ明るさよ
あるがまま・夢ゆるさず・とこしえに
変わりもせず 泣きもせず 笑いもせず
聖なり・力なり・停止なり
 
されどもルシファ 初めと終りの血
散りゆく星々のさなか
人と天をむすぶ灯りよ
 
ルシファ! ルシファ!
我が祈りを聞け         くう
なべて なべてのもの やさしき虚空に
 
 
 *「ルシファ」;Lucifer 金星、堕天使。のちの
   サタン(魔王)。
by Hanna
 

           ロンド
         夜の輪舞
素足でおどるのは つめたい野原
昼間のぬくもり 恋いながら
 
そっとそっと 風はつめたい愛撫のように
幾重にもよじれ からみつく
 
 踏まれた草の甘い香は
 ほのかに染まる頬のバラ
 貴方に向かい 手をさしのべて
 ゆれて倒れる やわらかな土のうえ
 
髪ほどき眠るのは 過ぎてゆく川
海のとどろき 恋いながら
 
そっとそっと 波はつめたい愛撫のように
飽きず幾度も ゆすりつづける
 みずも
 水藻ののばした腕に触れれば
 炎のごと胸ふかくに灯がともる
 貴方に向かい 声かれるまで
 歌って流せよ はるかな浜へ
 
 ルシファよルシファ 我が恋よ
          お    さだめ
 今宵 西のはてに墜ちゆく運命
       ロンド
恋をとむらう 輪舞の野原
ここでは永遠にさらさらと川がゆき
 
そっとそっと 骨とりだしてつめたいくちづけを
幾とせも幾とせも くりかえす
 
 ルシファよルシファ 我が恋よ
              さだめ
 今宵 骨を投げん かなしき運命
 
 愛して 愛して 愛してやまぬ
   ロンド
 夜の輪舞に骨はしろく燃える
by Hanna
 


          LUCIFERA!
くろく 墓地 ぼくは 赤
ばら色の雲 汚れていくのは闇のせい
LUCIFERA! それでも
そなたが愛のため ぼくは

くるって 川は 山のほうへ 走り
笑っていたぼくの 頬を打つみぞれまじりの風
LUCIFERA! それでも
そなたが愛のため ぼくは

 さしのべた腕から 細い細い稲妻が
 天へ向かって逆昇り
 そなたを射落とし この腕に抱きしめる
 つめたいほど熱い そなたを抱きしめる

あおく 海 ぼくは ひとり
からかっている 灯りも星も飛ぶ蝶も
LUCIFERA! それでも
そなたが誓いのため ぼくは 

 さしのべた骨から 細い細い衝撃が
 天へ向かって恋い昇り
 そなたをつらぬき この胸に抱きとめる
 はらはらと灰になるまで 燃えつきる



   *LUCIFERA・・・「光をもたらす者」。明け
    の明星ルシファーの女性形ですが、ディア
    ナ(アルテミス)の別名でもあります。
by Hanna
 


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