大陸の夢


      大陸の夢 〜Shanghai Dream
夢を張る翼に乗り
冬の日にとけた暖房の部屋の中で
醗酵する浅い眠りの精――

――まぼろしのように降り立つ
   一直線の地平よ

 ああ人々はざわめいていた
 暗くいこう海ぎわで
 時の流れをせきとめた町があった
 流れこむ昔の花びらがあった

夢を張る翼に乗り
冬の日に頬寄せる支那茶のかおりは
ふきすさぶ大地のきれはし

――まぼろしのようにほのぐらい
   一直線の道よ

 いま故郷の海は黄金色の酒
 たたえながら
 冬の静けさを満たしている
 とおくかの地をへだてている

けれど
醗酵する湯気のかなたで
ぼくの想いは大陸の空に溶け
ぼくの夢は淡く昔の色調であった
by Hanna
 


          夢の荒野を
ただ茫漠と 時のうつろうなか
広がりゆく夢の荒野で
眠りにつくのは ちいさな駱駝草

冬のせせこましい心の窓あけたら
吹きこんでくる風に
海こえた 夢の沙漠のにおいがする

 うしなわれた流れの痕を
 とぼとぼとたどりながら

 行きつくのは 世界のとびらか

ただ昏々と 夢見る冬のあけがた
なつかしい町を見たようで
目覚めはうつろなゼラチンづけの魚の目玉

冬の忘れっぽい心の窓あけたら
聞こえてくる流砂の音に
いちど途絶えた物語も よみがえり息づく

 うしなわれた流れを追い
 日に日をかさね 月は欠けめぐり

 行きつくのは 世界の外輪
 息苦しくなるような 夢の果て
by Hanna
 


         画廊喫茶にて
沙漠の老人のあかい眼差しに出会ったのは
しずかな夕ぐれどきの喫茶店。

外はじめつく雨模様

そこには熱くかわいた風が吹いて
らくだたちが藁をはむ、
すれるような音が聞こえる

沙漠の老人のあかい眼差しが
わたしの心にぽたりと落ちた
ねむったような日々の大河に。
      まち
外は喧噪の都会の底

彼処には平らな大地が薫り
らくだたちの鈴の音は
バザールの夢をつたえる

沙漠の老人の、夕陽のような、熱いあか色。
by Hanna
 


          沙 漠 行
 きれん
祁連山から湧き出る雲は
手づかみできそうに せまり
れんがは燃えている
この砂色の大地と山とが
世界の果てまでつづきそうな
そしてわたしの想いもまた
それらとともに どこまでも
この地上を へめぐっていくような

雪と雲との溶けあう峰を
はるかにのぞんで 進めば
足下にかげろうがゆれる
この砂色の大地と山とが
 とき
時間の果てまで在りそうな
そして私の夢もまた
それらとともに いつまでも
あの天上で 生きつづけていくような
by Hanna
 


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