おリョオリのうた 2005年・初夏
「ちまき」
五月の節句には柏餅とちまきが付き物です。ほかにも武者人形、こいのぼり、
しょうぶ湯など、関連アイテムは豊富ですが、どうやらこの日は男児の成長を
祝うというよりも、本来は邪気に満ち満ちた日で、それを祓うために行事をし
た、というのが起こりのようです。それに男子の成年の行事が複合して、現在
のような形になったそうですが、柏餅とちまきと、同じように餅米を粉にして
蒸したようなものを2つも食べるというのには、わたしは重複感を覚えます。

今や、うちの子たちは「ちまき」と言えば「中華ちまき」を想像しているかも
しれません。こちらは「おこわ」に近いものですが、五月の節句のちまきは、
花見だんごを細長く丸めて笹の葉で包んだみたいな感じです。やや甘いのから
かなり甘いのまで、また軟らかさもいろいろあるようですが、あまり軟らかい
と笹にこびり付き、なめ取ろうとすると舌を切ったりと、大騒動になります。

京都の祇園祭にも「ちまき」が登場します。わたしは詳しく知りませんので、
食べたことのある方はぜひ教えてください。ちまきは何であるか? 一説によ
ると、ちまきが男で柏餅が女、と考えられるそうですが、それにしてもどうせ
最終的には口に入るものだとしたら、それぞれ原材料の違うものにしておいて
ほしかったと思います (^_^)。


(2005年5月4日)  【関連書き込み

「ザワークラウト」
キャベツの酢漬け、というより、ドイツ料理でソーセージなどに添えて出てく
るアレです。本来は発酵食品なんですが、そこはそれ、はなだんな風に手軽に
作ってしまおうというわけです。凝り始めたらキリがないけど、どこらへんで
折り合いをつけられるか、ということかもしれません。本物のように、ウニョ
ウニョにならずに、多少歯ごたえが残った仕上がりです。ともかくレシピを。

材料:キャベツの葉数枚(せん切りにして丼鉢1杯程度)、塩少々、レモン汁
    大さじ1〜2杯、(あれば)クミンシードかキャラウェイ小さじ1杯
作り方:1)キャベツをせん切りにしたら、耐熱皿か丼に乗せ、塩、レモン汁
    を振り、クミンなどを散らしてラップをする(少しすきまを作って)。
    2)レンジで3〜5分、庫内に湯気が充満し、クミンなどの香りが
    たちこめてきたら加熱を止める。3)ラップをしたまま室温まで冷ま
    し、天地をざっくりと混ぜて、冷蔵庫で保存する。

今の季節の新キャベツに限らず、外葉をどうするか考えてしまいますが、わた
しはやはり捨てられない人なので、野菜炒めにするか、このザワークラウトの
ように熱を加えて食べてしまいます。青い葉のほうが、ほんとうは栄養は豊富
なんですよね。公式レシピでは「あれば」と書きましたが、クミンなどを入れ
ると風味は全然違います! ……それと、葉の芯(太い葉脈)は薄切りにして
混ぜてください。充分食べられます。食感はやや落ちますけれども(^_^;)。


(2005年5月7日)  【関連書き込み

「コルキャノン」
新ジャガと新キャベツ、この組み合わせがあれば、みなさんはどうしますか?
ここにアイルランド的な1つの答えがあります。素朴な料理ですが、青ねぎが
あれば、それも加えてください。「季節をいただく」というのは嬉しいもので
す。アイルランドでは春や初夏に限定した料理ではありませんが、これも工夫
次第で、それぞれに、家庭のcolcannonを楽しめばいいのではないでしょうか。

材料:じゃがいも、キャベツ各適量、青ねぎ数本、塩、牛乳(、こしょう)。
作り方:1)じゃがいもは茹でて「粉を吹かせ」、熱いうちに刻んだねぎを混
ぜてマッシュにする。2)これを温めた牛乳でなめらかにし、塩(こしょう等
の香辛料も使用可)で調味する。3)最後にせん切りキャベツを混ぜ込む。

これだけ!です。コツといえば、最後まで温かい状態で作ることでしょうか。
「食べるときに、各自が取り分けた山にバターを1片乗せ、とろけさせながら
食べる」……などと書いてある本もありますが、そうしようと思うなら、ドラ
イヤーの熱風を当てるなどすればいいのでは (^o^)。それよりも、せん切りの
にんじんやハムを混ぜてみたい気に駆られますが、まずはシンプルなレシピを
試してみてからですね。


(2005年5月8日)  【関連書き込み

「蝦蛄の唐揚げ」
シャコは砂浜に棲息する節足動物で、寿司ネタで俗に「ガレージ」と呼ばれる
エビ茶色したエビのようなヤツです。今回、唐揚げに使うのは、「穴ジャコ」
という干潟に穴を掘って棲むタイプで、普通のシャコよりやや頭でっかちです。
初夏が旬のシャコを、殻のまま唐揚げにして、頭からバリバリといただくと、
まさに「自然をそのままいただいている」ような、滋味と野趣を味わえます。

シャコの身は淡泊で、ほとんどクセがありませんが、頭ごと唐揚げにすると、
有るか無しかのワタから、ほのかに磯の香りを味わうことができます。蒸した
シャコは殻が硬く、両サイドをはさみでバシバシ切って身を取り出さないと、
食べられませんが、じっくり揚げると殻ごとイケルのも、嬉しいところです。

かつて住んだ岡山では、瀬戸内側に「虫明(むしあげ)」という地名があり、
この「虫」はエビやシャコだろうと言われています。倉敷では玉島乙島地区で
乙島(おとしま)ジャコが獲れ、名物になっています。似たようでいて、エビ
は「海老飾る」というときだけ新年の季語で、普通は季語にならないのですが、
シャコはそれだけで夏の季語です。まもなく瀬戸内海では、魚が群れをなして
島のように盛り上がって見える、という魚島(うおじま)の季節を迎えます。


(2005年5月12日)  【関連書き込み

「錦糸卵」
バラずしの飾りなどに使う、細切りの薄焼き卵です。上手に焼いて丁寧に細く
切れば、綺麗に仕上がるのでしょうが、ここではちょっとズルい方法をご紹介
します。ただし、わたし自身もこの作り方に完全に納得しているわけではあり
ません。料理人の作るホンマモンの錦糸卵は、もっとふわふわして美味しいの
だろうと思いつつ、アマチュアはアマチュアなりに工夫を重ねる毎日です。

材料:小麦粉大さじ1〜2杯、粉と同量かやや多めの水、卵1コ、塩少々、油。
作り方:1)小麦粉に水を少しずつ加えて混ぜる。てんぷらの衣よりややゆる
  めに。2)よく溶けたら卵を加え、よく混ぜて、お好みで塩で調味する。
  3)薄く油を引いたフライパンを熱し、煙が出たら卵液を少なめに流し、
  弱めの中火で、フライパンを傾けて薄く広げる。4)あちこち膨らんで、
  端がチリチリしてきたら、箸などで裏返す(意外と丈夫です)。5)裏を
  焼くときは焦がさないように。6)まな板に取り、冷めてから細く切る。

卵100%の「薄焼き卵」から小麦粉100%の「お好み焼きの台?」まで、
その中間のどのへんまでが「卵焼き」と言えるのか。確かに、卵が多いほど黄
色く作れます。また、卵100%だと切るときにボロボロになったりしますが、
小麦粉を入れると切りやすく、切り口も滑らかに仕上がります。小麦粉は「そ
んなにたくさん粉を使うのか」と思うぐらい使っても、細切りすればちゃんと
錦糸卵に見えます。なお、手順の中で、粉に「水を混ぜる」のをお忘れなく。
水に「粉を入れる」と溶け残りができますので、気をつけてください。


(2005年5月19日)  【関連書き込み

「明石焼き」
錦糸卵に味を占めて (^_^)、次なるは明石焼きに挑戦です。油を引いたフツー
のフライパンで作るという、大胆なレシピです。よろしければお試しください。

材料:小麦粉60cc、水200cc、卵2コ、蛸、油、だしの素、醤油、ミツバ各適量。
作り方:1)小麦粉を水で溶き、卵を加えてよく混ぜる(だしの素少々を入れ
  てもよい)。2)油を引いてよく熱したフライパンに卵液を入れ、弱めの
  中火にして、どろどろになるまでかき混ぜる。3)とろけたスクランブル
  エッグのようになったら、小さく切った蛸を適宜置く(10コ前後?)。
  4)先のほうに油を塗った菜箸で、蛸の個数になるように区分けし、蛸を
  中心にまとまるように生地を寄せる。5)適宜、蛸ごとに天地を返して、
  不定形ながら蛸の入った卵焼きの玉ができるようにする。6)小鉢(そば
  ちょこ等)にだしの素、醤油、刻んだミツバを入れ、湯を注げば吸い物が
  できるようにしておく。7)たこ焼きが充分固まったら、小皿などに取る。
  8)小鉢に湯を注ぎ、できたたこ焼きをつゆにひたしていただく。

大阪のたこ焼きと違い、明石焼き(現地・兵庫県明石市では「玉子焼き」)は
大ぶりにふわふわと作り、具は蛸だけで、しかも澄まし汁に浸けていただくの
が独特です。大阪人の家庭に必ず1台はある、と言われる「たこ焼き器」では
大きな「玉子焼き」ができませんので、あえて緩めの衣でゆっくり作る方法を
選びました(現地でも緩い粉で焼いているようです)。油はてんぷらの残り油
などではなく、ぜひとも新しい油をお使いください。途中で生地がこびりつく
ように思っても、最終的にはこそげて丸められます。つゆは、めんつゆを薄め
ても可。なんなら、まず蛸ナシで試されてもよいかと思いますが……(^o^;)。


(2005年5月24日)  【関連書き込み

「水無月」
6月に入りました。月末が「夏越(なごし)の祓え」だそうです。旧暦なら、
ちょうど暑い盛り、「夏越し」なんでしょうが、新暦では梅雨のさなかになり
ます。1年の前半が終わったという意味づけはできそうですが、梅雨でもあり、
区切りにしにくい時期ですね。もっとも、行事は後になるよりも前倒しでする
ほうがよい、という考え方もあり、新暦で問題はないのでしょうけれども。

水無月といえば、和菓子の「水無月」。餡コの粒(小豆)を乗せた、緑と白の
2色のういろうで、直角二等辺三角形に切ってあります。由来は知りませんが、
小さいころに「白・黒・抹茶・小豆・珈琲・柚子・桜」という宣伝に親しんで
以来のういろう好きのわたしは、6月に句会(連句)をするときは、たいてい
お茶菓子に選んでいました。冷たくした1切れは、この梅雨入りしたかしない
かの季節、口に涼感を運びますね。熱いお茶でも、冷茶でもイケます。

ういろう(外郎=wailang)は、米の粉と砂糖を練って蒸したものですが、団子
や生八つ橋も同類でしょう。砂糖だけの素朴な甘さが持ち味ですが、ぷるぷる
感に好き嫌いもあるようです。わたしは、ごはん代わりに1棹いただけるクチ
ですが (^o^)。


(2005年6月2日)  【関連書き込み

「豆あじの酢漬け」
近所のスーパーに豆あじが出ました。さっそく買ってきて、網で両面をしっか
りと、焦げ目がつくぐらいに焼き、酢:醤油:酒=1:1:0.5ぐらいの漬け汁
に、熱いうちにヂュンと言わせて漬けました。冷めて味がなじめば、いつでも
食べられ、保存も利きます。小あじになると、頭や背骨がやや硬くなりますが、
5〜6cmぐらいまでの豆あじだと、内臓もゼイゴも含めて、全く気になりま
せん。年中出回るものでもなく、今の季節にしか味わえないものなのでしょう。

岡山ではサッパ(ママカリ)を使います。小さめのサッパは、生のまま開いて
頭と背骨を取り、醤油を入れない酢に漬けて、締めます。銀色の皮が綺麗な一
品で、バラ寿司(祭ずし)のトッピングの具にもなります。やや大きめのは、
上の豆あじと同様にして、焼きママカリの酢漬けにします。香ばしい一品です。
わたしは焼いたもののほうが好きで、居酒屋ではよく注文していました(^_^;)。

豆あじも焼きママカリも、おかずに良し、酒のアテに良し。頭ごと食べるので
カルシウムも豊富です。子たちには「酸っぱい」と不評なので、漬け汁に酒を
加えて、酸っぱさを抑えたつもりですが、あまり評価は変わりませんでした。
でも、子ども向けでなくても、酒を加えたほうがマイルドに漬かっていいです
ね。似たような料理に、油で揚げて作る「南蛮漬け」があります。ギトギトす
るので普段は作りませんが、アジやサバの開いた身なら南蛮漬けに向きますね。


(2005年6月5日)  【関連書き込み

「新しょうがの甘酢漬け」
新ナントカが多く出回る季節です。新たまねぎや新じゃがは、水分が多いのが
特徴でもあり、マイナス部分でもあります(わたしは、これらはヒネのほうが
好きです(^_^;))。新ごぼうは若ごぼう(葉ごぼう)ともいいますが、これの
煮付けはヒネたゴンボには出せない若々しい味わいがあります。で、酢漬けが
続いてしまいますが、今回はピリリ・サッパリとした味わいの新しょうがです。

新しょうがを買ってきたら、薄い皮をむくかこそげるかしたあと、横に(繊維
に直角に)ごくごく薄く切ります。このとき、皮に近い部分は軟らかく、辛み
もあまりありませんが、中心部の繊維の硬い部分は、やや辛みがあるようです。
この薄切りした新しょうがは、(1)ざるに広げて熱湯をかけ回すか、(2)煮立っ
た湯に短時間くぐらせてしんなりさせるか、したあとで、砂糖をいくぶんか加
えた酢(米酢)に漬けます。象牙色だったのが、パッとピンクに色づきます。

この「加熱して熱いうちに酢に漬ける」というのは、西洋のピクルスの手法で
すね。湯がきすぎると風味が抜けますので、注意してください。……今これを
書いていて、東京の谷中しょうがを思い出しました。長い茎が付いてスーパー
などで売られているものの根の部分だけを、味噌を付けたりしてかじります。
小粋でありながら、野趣あふれるオツマミ(酒のアテ)でありました (^_^)。


(2005年6月6日)  【関連書き込み

「そば焼酎のカッパ割り」
焼酎ブームだそうです。それも、大分県のIとかNとかの飲みやすい麦焼酎で
はなく、かつて「くさい」と言われていた芋焼酎が人気を集めています。だの
に今回取り上げるのは「そば焼酎」ですが、それはUという有名なそば焼酎を
出しているメーカーが全国的に有名にした、水割りにきゅうりのスライスを入
れた「カッパ割り」という飲み方を、わたしが気に入っているからです。

小洒落たお店のランチで、セットに付くサラダといえば、キャベツのせん切り
・トマトの櫛切りに、きゅうりの斜め薄切り、というのが定番でしょう。この
きゅうりの薄切りを焼酎の水割り(orロック)に加えるとは……。きゅうりを
使った西洋のカクテルには、皮だけではありますが、テキーラとスロージンを
使った「スローテキーラ」の例があります。きゅうりはウリ科ですから、よく
熟れればメロンのような香りがしないでもありません。また、皮には独特の青
くささがあります(このあたり冬瓜も似ていますね=皮は食べられませんが)。

このスライスを入れた「カッパ割り」。「そば焼酎にしか合わないのか?」
……わたしが試したところでは、ウイスキーの水割りはペケでした。芋焼酎だ
と、芋の香りに負けるような気がするし、麦焼酎だと、きゅうりが勝ちすぎる
感じです(とても主観的ですが (^o^))。そば焼酎にきゅうり、というのは、
いい線ついてるナ、という感じがして、創案者に敬服してしまう次第です。


(2005年6月9日)  【関連書き込み

「実山椒のしょうゆ漬け」
小粒でもヒリリと辛い山椒の実。落語「野崎詣り」のサゲにも使われていま
す(^_^;)。ちょうど出回る時期ですので、小パック(¥398)を1つ買って
きました。家で、房から実を外すのに1時間半……。軸が少しでも残ると口に
入れたときに違和感があるので、丁寧に取り去りましたが、指先が痛くなり、
爪の中が緑色になりました。それでも、実が2/3、捨てる軸が1/3でした。これ
は、殻付きピーナッツや甘栗のことを思えば、歩留まりはいい方なのでしょう。

これを、ほんとうは佃煮に煮詰めればいいのでしょうが、今回はお手軽に、1
分間ほど湯がき、熱いうちにしょうゆ+みりん+酒の混合液に漬け込みました。
冷ましたあと、冷蔵庫に置くなどして、味がなじめば(長く置いててもあまり
なじみませんが)食べられます。青くさい、山椒そのものの風味が残った、確
かにあとでヒリリと来る一品です。ただし、わが家は、わたし以外は誰も山椒
が好きではないので、自分の分を少し残して、あとは母にあげるのです。

そうは言っても、転んでもタダでは起きない大阪人 (^o^)、しょうゆの漬け汁
を多めに作っておき、実と汁の一部はあげても、残りの液はわたしが使わせて
いただくことにします。山椒風味のしょうゆですから、冷ややっこに掛けると
美味しくいただけます。長芋のせん切りや大根おろしにもgood!ですね。


(2005年6月10日)  【関連書き込み

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