おリョオリのうた 2005年・春
「わけぎのぬた」
3月3日は桃の節句。とはいえ、こんな時期に桃の花が咲くわけもなく、旧暦
だった時代の名前を引きずっているのでしょう。ひなまつりには、ばらずし、
わけぎのぬた、はまぐりのおつい(うしお汁)というのが、わが家の恒例でし
た。わたしには女兄弟がいなかったので、ひな飾りや白酒、ひし餅はありませ
んでしたが、節句の行事としてはおすしを食べることになっていたのですね。

わけぎというのは軟らかい葉ねぎ(青ねぎ)で、これを湯通ししたものを酢味
噌(米酢+白味噌+砂糖or味醂)であえれば「ぬた」という料理になります。
ここにイカか貝のむき身が入れば、より高級な料理になるのでしょうが、子ど
もはだいたい酢味噌が嫌いと相場が決まっており(?)、わたしもひと口だけ
箸をつけてお茶を濁していました(^_^;)。最近は食べなくもないですが、個人
的には「早春を感じる料理」というほど思い入れがあるわけでもありません。

ひな飾りをしなくとも、子どものころは「ひな菓子」を買ってもらったりしま
した。ハクセンコのような砂糖菓子でひし餅や巻きずし(ちゃんと小さく海苔
が巻いてあった)などの形にしてあり、コリコリと食べると美味しかったのを
覚えています。しかし、一度は本物のひし餅を食べたいと思い、大人になって
ようやく買って網で焼いて食べました。そのときは網じゅう焦げついてしまい
ましたが、これはどうやら砂糖をたっぷり練り込んだ甘い餅だったんですね。

(長らくお待たせしましたが、本日より再開いたしますので、またご贔屓に)


(2005年3月10日)  【関連書き込み

「初午の赤い餅」
3月11日は初午(はつうま)でした。初午というのは旧暦2月の最初の午の
日(だから毎年日付が変わります)ですが、正月もひなまつりも新暦で祝うわ
が家にあって、この初午は旧暦を守っていました。春を迎える、という意味合
いのお祭りが、新暦2月の最初というのでは、あまりにもおかしい、というこ
とだったのでしょう。この日には、神棚に赤い餅を供えるのが習わしでした。

わが家の神棚は、4人(4柱)の神さんが並んでおられるのですが、それぞれ
に2ツ重ねの餅を供えるのに加え、両端の神さんの上の餅だけは赤く塗った餅
にする、というのが特徴です(下図)。初午は春を呼ぶ祭りであると同時に、
お稲荷さんのお祭りでもあり、そこから赤い餅につながっているのでしょう。

(正月にも餅を注文する)近所の和菓子屋でわざわざ赤い餅を含めて買うので
すが、後年は食用色素を水で溶いて、家で小餅に塗っていました。あまり濃く
塗ると、焼いて食べるときに苦いのですが、子どものころはまったく平気(ほ
かにも毒々しい色が付いた菓子類はいろいろあった(^_^;))。ほかと違う赤い
餅を「この時しかないもの」と思って、喜んで食べていました。

     ○   ○        ← は赤い小餅
  ○   ○   ○   ○     ← ○は白い小餅
  凵   凵   凵   凵     ← カミノシキ(木製の皿)


(2005年3月14日)  【関連書き込み

「グリーンビール」
17日はアイルランド最大のお祭り「セント・パトリック・デー(St. Patrick's
day)」です。キリスト教を伝えたパトリックさんの命日を記念して、世界中で
パレードや催しが行われます。アイルランドといえば黒ビールが有名ですが、
この日は国のシンボルカラーである緑にちなみ、普通のビールを緑色に着色し
た「グリーンビール」を飲みます。

近年は日本でも東京や京都などで17日の前後の週末にパレードが開催される
ようになり、大勢の「何か緑色の物を身に付けた人たち」が賑やかに練り歩き
ます。かつて「グリーンクロール」という催しに参加したことがありますが、
これはいわば「パブの飲み歩き(はしご酒)」で、東京都心の数軒のパブを、
仲間たち(ジャパニーズもアイリッシュも)と一緒に地下鉄やタクシーで移動
しながら、パイント(570cc入るコップ)を何杯も空けました(*^_^*)。

「グリーンビール」は単に着色してあるだけですが、ほかの日には飲めません。
あの、アイルランドが1次リーグを突破して躍進した2002年のサッカー・
ワールドカップでも、ファンがパブに集まって大声援を送りましたが、飲み物
はギネス、キルケニー、マーフィーズなどのビールでした。それだけ、この緑
色のビールは特別なものなのです。


(2005年3月16日)  【関連書き込み

「お手軽・塩昆布」
さてさて、鍋物の季節も最終盤に差しかかっている今日このごろですが、だし
を取ったあとの昆布を、みなさんはどうされているでしょうか。水から入れた
昆布は、沸騰直前・沸騰直後・鍋が済んだ後……などなど、取り出すタイミン
グはさまざまでしょうが、そのままかじってもやわらかくふやけている程度の
味わいです。これを、チョットひと工夫で「おかず」にしようという訳です。

細く刻んで、沖縄風くーぶーいちりー(昆布炒め)にしてもいいのですが、わ
たしは細く刻んだ昆布を小皿に乗せ、さしみ醤油(みりんなどを加えた醤油)
を回しかけて、ちょっとあえ、ラップを昆布に密着するようにかぶせて(落と
しぶたのように)、レンジでチンします。時間は、目と鼻を使って「ヤバイ」
と思う前に止めてください(^_^;)。即席ながら煮詰めた感じに仕上がります。

普通に鍋で煮詰めると、仕上がりが硬くなることが多いのですが、これなら
「どうせ適当に作ったのだから、少々味が薄くても硬くてもいいか」と、妙に
妥協してしまえます (^o^)。なお、わたしは繊維と直角に切ったのが好きです
が、これはご自由に。また、塩昆布といっても、塩ふきではなく、昆布の佃煮
ですが、シオコンブ(シオコブ)という呼び方でいいんですよね。


(2005年3月22日)  【関連書き込み

「ソフトとんかつ」
豚挽き肉といえば、ギョーザやシューマイに使うのが通常でしょうが、今回は
おろししょうがと塩少々を混ぜたうえでよく練り、薄く成形してフライにして
みました。赤身のジャキつき、脂身のヌルつきともに無く、(ヒレ肉とまでは
言いませんが)均一の仕上がりとやわらかな食感に、子たちにも好評でした。

以前、豚挽き肉をよく練ったものに好みのハーブ類を混ぜ、細長くしてラップ
でくるんで電子レンジで加熱し、「自家製ソーセージ」を作ったこともありま
すが、豚だからよく加熱しようとすると、お汁が噴いて出て、カスカスの仕上
がりになったことがありました。牛でも「ハナダナン・クックブック」の「ハ
ンバーグα」(リンク)のように、肉100%でたまねぎもパン粉も入れない
ものは、パサパサになる危険性が大です(^_^;)。しかし、今回はフライですの
で、かなり長時間揚げたのですが、中までジューシーにできあがりました。

なお、西洋のカツレツは「多めの油で焼く」ような料理、とのことで、わたし
はカツの半分強がつかる程度のサラダ油で揚げました(ずっと弱めの中火で、
最後だけカラッとさせるため火を強めた)。「叩ァけーばー、延ーォびーる、
カツレツの肉ョ」と歌われるほど薄ければ、もっと少量の油でいいのでしょう
が、さすがにミンチとんかつでは、そこまではいきませんでしたね (^_^)。


(2005年3月27日)  【関連書き込み

「シェパーズ・パイ」
パイといえば、バターを練り込んで幾重にも折り重ねたパイ生地が思い浮かび
ますが、これはその代わりにマッシュドポテトを使った、挽き肉のパイです。
家庭料理らしく、あえて素朴なレシピを紹介しますが、工夫次第でいくらでも
豪華にできますので、独自にアレンジして楽しんでいただけたらと思います。

材料:ジャガイモ500g、挽き肉200g、ニンジン半本、油、塩、こしょう。
作り方:(1)ジャガイモは茹でてつぶし、マッシュドポテトにする。(2)みじん
切りにしたニンジンを挽き肉とともに油で炒め、塩・こしょうで味付けする。
(3)耐熱皿に薄く油を塗り、炒めたものにポテトを1/4〜1/3混ぜたものを敷き
詰める。(4)上から残りのポテトで覆い、表面に焦げ目が付くまでオーブンで
焼いて、できあがり。(5)切り分けて、ケチャップなどを付けていただく。

マッシュドポテトに牛乳を混ぜても可です。肉の味付けはシナモン等も可。炒
めたものにポテトを混ぜるのは、切り分けたときにパラつかないための、はな
だんなの工夫です。覆ったポテトの表面にフォーク等で“砂紋”を描くと美し
いでしょうね。焼くときに粉チーズを振るのも可。食べるときにバジリコを振
りかけるのも可。適宜バターも使えます。もちろん、オーブントースターで構
いません。巷のアイリッシュ・パブには「ギネス入りビーフシチューのパイ皮
包み」などというメニューも散見されますが、こういうパイもいかがですか。


(2005年3月31日)  【関連書き込み

「タケノコの煮付けのてんぷら」
春の味覚、関西ではタケノコも有名です。わたしが小さい頃は、輸入物の水煮
パックなんてありませんから、買うか貰うかしたゴロッと1本が、有るか無い
か、です。有る時には、勿論、しばらくはタケノコ尽くしの日々が続きます。

タケノコごはん、若竹汁、煮付け、木の芽あえ(これは当時はあまり好きでは
なかった)、てんぷら……。京都府長岡京市にある某タケノコ専門店のように
“刺身”にはできないのが悲しさ。連日の乏しいレパートリーにうんざりして
「もうええ加減にしてぇな」と母親に文句を付けたことも一再ならず(^_^;)。

でもその中で、今でも気に入っているのは「タケノコの煮付けのてんぷら」で
す。根元に近い硬いところを輪切りにし、それを4つに切って、濃いめのだし
で煮いたおかずですが、余った分をてんぷらにするのです。再度火が通って、
硬かったのが軟らかくなり、しかも中まで味がしみているのでツユ要らず。衣
のボリューム感と油のうまみも加わって、ただ煮いただけのタケノコより数倍
美味しく感じました。油が加わり、きんぴらのような風味になったんですね。


(2005年4月9日)  【関連書き込み

「東京コロッケ」
大阪では13日から造幣局の桜の通り抜けが始まりました。19日まで、遅咲きの
桜を眺めながら“花のトンネル”を歩くのですが、公園にずらり並んだ露店も
楽しみのひとつです(こっちがメインだったりして(^_^;))。中でも、小さい
頃からよく並んだお店に「東京コロッケ」があります。東京には無いのかな?

茹でたジャガイモを皮ごとマッシュにして、小指の先ほどの大きさの玉をいっ
ぱい作ります。これをバットで転がしながら、表面に小麦粉をまぶし、油で揚
げます。これを串に6コ、7コ、8コと刺し、ソースをたっぷり付けて食べる
のですが、何個になるかは屋台の店先のパチンコ台で決まります。玉を1つ貰
って打ち、天に入れば8、その他の穴は7、ハズレは6コ、などとなります。

子供の頃、たっぷり付けてもそんなに辛くないしゃぶしゃぶしたソースが不思
議でした。家で作ってみたときは、揚げ油が低温だったか、ポテトが水っぽか
ったりしたのか、コロッケが油の中で“爆発”し、さらにソースもどう混ぜ合
わせても辛く、さんざんだったのを覚えています。それでも懲りずに、今なら
もう少し上手にできるのではないか、などと思ったりするのですが…… (^_^)。


(2005年4月15日)  【関連書き込み

「なたね」
黄色いつぶつぶ。アブラナではなく、ふんわりした美味しいおかず。材料は、
卵、塩少々、砂糖少々、醤油ほんの少々。鍋に入れて温め、固まりはじめたら
固まりきらないうちに、何本もの菜箸でぐるぐる、ごじごじ、ぐるぐる、ごじ
ごじ……。汁けがなくなりかけたら、火からおろして、それでも、ぐるぐる、
ごじごじ、かき混ぜる。ぽろぽろになれば、できあがり。だけど、ちょっとぐ
らい鍋肌に焦げついたぐらいのほうが、美味しかったりして。

……と、ポエチカリーに書いてみましたが(^_^;)、要するに「煎り卵」です。
油(バター)を使う「スクランブルエッグ」に対して、こちらは素朴に、ぽろ
ぽろになるのを良しとします。家では塩でなく、醤油主体の味つけで、黄色と
いうより少しくすんだ色合いでしたが、それもこうばしくて好きでした。

信玄弁当(三色or五色弁当)の彩りとして欠かせませんし、醤油を入れずに
作ったものを少量のマヨネーズであえると、サンドイッチの具にもなります。
煎り卵でなくナタネ、茹で卵でなくニヌキ、うどんに乗せればツキミ、フライ
パンに落とせばメダマ……。卵って、親しみ深い食材なんですね。


(2005年4月22日)  【関連書き込み

「そうめんばち」
奈良・長谷寺のボタンはもうすぐ見頃です。以前、ここのお土産に「そうめん
ばち」(索麺撥、「ばちそうめん」とも)を買って帰ったことがあります。大
きな袋にいっぱい入って300円かそこらだったので、「安い」と思って買っ
たのですが、実際は家で使ってみると<空気ばかりを買わされたか(^_^;)?>
と思うぐらい、中身の量としては物足りなかったように思います。

そうめんは小麦粉を練った生地を細く伸ばして作りますが、乾麺にするときに
2本の棒に何回も掛け渡し、それを引っ張るようにしてから、片方の棒を垂ら
して、重みで伸ばしつつ、乾かします。これの真っ直ぐな部分が「そうめん」
で、棒に掛かったU字形の部分が「そうめんばち」と呼ばれるものです。

すまし汁の椀だねにすれば、しゃれた感じになるでしょう。小麦粉の粘り成分
が多いせいか、噛みごたえはモチモチしています。汁物にしない場合は、茹で
て戻してから使います。おだまき(通常はうどん入りの茶碗蒸し)、チャンプ
ルーなどにも使えそうです。もちろん、茹でてから水で締めたものを、麺つゆ
でいただいてもいいでしょう。梅肉であえれば、おつまみにもなりますかね。


(2005年4月29日)  【関連書き込み

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