おリョオリのうた 2005年・晩夏
「長芋そうめん」
夏らしいしゃれた一品です。家庭の味というより料理屋のメニュー(小鉢物)
かもしれませんが、作るのは難しくありません。一度お試しください。包丁で
作るなら、皮をむいた長芋を縦に薄切りし、さらに細く切るだけです。長芋の
長さは、包丁の刃の長さより短いほうがいいでしょう。スライサーや、皮引き
器(ピーラー)に似た千切り器を使うときは、長さの制約はありません。ただ、
皮をむいた芋はぬるぬると滑るので、手を切らないように注意してください。

そうめん状にしたら、小鉢に盛り分け、めんつゆ、梅肉、卵の黄身としょうゆ
などでいただきます。いずれも、切りのりか青のり粉を乗せてもいいでしょう。
めんつゆでいただくときは、あらかじめボウルで長芋そうめんとめんつゆを少
しあえておき、盛り分けてからさらにめんつゆを足せば、味が行き渡ります。

長芋は、おろして「とろろ」、細切りにして「そうめん」、切り方により「短
冊」「拍子木」など、いずれも生で楽しめる食材です。拍子木や輪切りにした
ものを素揚げしたり、とろろに小麦粉と刻みねぎをまぜて鉄板で焼き、仕上げ
にしょうゆで味を調えたりしても面白いですが、夏場はやはり冷たく冷やして
いただきたいものです。単なるとろろでは自然薯(じねんじょ)の粘りにかな
いませんが、サクッとした長芋なりの食感を生かせば、工夫も生まれますね。


(2005年8月1日)  【関連書き込み

「骨せんべい」
魚へんに春と書いてサワラですが、昨今は幼魚のサゴシも含め、年中出回って
いるようです。身が柔らかいので、味噌漬けにして身を締めたりもしますが、
簡単に食べるのなら小麦粉をまぶして焼くムニエルでしょう。油を大量に使う
と「唐揚げ」ですが、フライパンに大さじ2杯ぐらいのサラダ油で充分です。
バターでなくてもOK。焼くときにあまり動かさず、せいぜい裏・表、何回か
返す程度で、きつね色になるまで焼き、カラリと香ばしく仕上げましょう。

このとき、ぜひ骨付きの切り身を買ってきてください。そして骨のほうに少々
身が残ってもかまいませんから、包丁で骨と身に分けます。身からは、ヒレの
近くの骨なども、そぎ取ります。身は身だけにしておいて、お好みでハーブや
塩を振ってから小麦粉をよく付けて焼き、骨は骨で同様にして焼きます。焼く
ときは身の厚さにもよりますが、弱めの中火でじっくりと焼いてください。

身が先に出来上がっても、骨は濃いきつね色になるまで、まだまだじっくり火
を通してください。パリパリに仕上がります。なお、胴骨を焼くときは、なま
ぐささと爆発防止のために、中心のすぐ脇を通っている赤い骨髄を、竹串など
を通して流水でよく洗い流しておくのがコツです。カレイの唐揚げの身を食べ
たあと、骨を二度揚げしても美味しい骨せんべいになりますが、少しの油だけ
で簡単に作れる、ということで、サワラの切り身バージョンを紹介しました。


(2005年8月7日)  【関連書き込み

「ハクセンコ」
お盆には、亡くなって仏様になったご先祖さまたちが帰ってこられます。いろ
いろとお供えをしますが、その中でもお盆菓子の代表と言えるのがハクセンコ
です。砂糖とでんぷんを突き固めたような、モロモロした食べごたえで、中に
餡コが入っています。正式には「ハクセッコウ(白雪[米羔])」と言うそう
ですが、大阪ではハクセンコですね。落雁に似ていますが、少し違うようです。

小さい頃は、仏壇になすやきゅうりなどの野菜、すいかやマッカなどの果物、
袋菓子や駄菓子の類などとともに、3色の蓮をかたどったハクセンコが、よく
供えられていました。3色とは、蓮の花の形のピンク色、蓮の実の形の薄黄色、
蓮の葉の形の緑色です。食べるとほのかな甘さがあって、そこそこ美味しいの
ですが、子どもには1コが巨大(に思えた)なため、なかなか手が出ませんで
した。すいかとか、他にも美味しいものがいろいろとありましたから(^_^;)。

ハクセッコウのコウ(米へんに羔)は、沖縄名物・ちんすこうのコウと同じで、
クッキーといった意味でしょうか。わたしなどはハクセンコと聞くと「仏さん
のお供え」がすぐに思い浮かびますが、ほかに和菓子として食べないのでしょ
うか? お盆の時期以外にあまり見かけないので、よく分からないのですが。


(2005年8月13日)  【関連書き込み

「氷ずいか」
最近あまり見かけなくなりましたが、かつてはよく食べたのではないでしょう
か。すいかを平たく(たいていは三角に)切って、皮と白い部分を取り、その
上から、かき氷を掛けたものです。すいかはもちろん、そのままかぶりついて
も美味しいのですが、このひと手間でずいぶん豪勢になったような気がしまし
た。すいかも冷えるし、最後に皿に残った汁も甘く、種を残してすすりました。

今のように、すいかが切り身で売っていなかった時代は、八百屋で丸ごと買う
しかありませんでしたが、井戸のある家ならともかく、冷蔵庫にも入らないよ
うな大きな玉は、水道水で冷やす程度でした。そうしたところに「氷ずいか」
の知恵がうまれたのでしょうか。ラップ材が今ほど普及していなかった頃は、
半分食べ残したすいかなども、そのまま冷蔵庫で保存していたのでしょうね。

すいかの白い部分は漬物にしてもいい、と聞いたことがありますが、昨今では
白い部分のほとんどない種類もあります。それに一様に甘く、タナ落ちもあま
りありません。現代風というか、ワイルドな感じが失われてきたように思いま
す。そういえば、縁側も、渦巻き形の蚊取り線香も、行水も、うちの子たちは
知りません。もちろん、すいかの種をプッと飛ばすというようなことも……。


(2005年8月15日)  【関連書き込み

「なすのごまあえ」
白味噌があるときに作ってください。冷やして食べれば、いい箸休めになりま
す。いたってシンプルで、なすの他に何もまぜないほうがいいと思います。た
くさん作るのも少し作るのも、手間は同じですので、多めに作ってはいかがで
しょうか。あえものとはいえ、作り置きが利き、冷蔵庫に入れておいたほうが
かえって味がなじむように思います。もちろん作りたてでも美味しいですが。

材料:なす何本か。あえ衣用に白味噌、白ごま、みりんまたは砂糖、各適量。
手順:1)へたを取ったなすは4つに割り、薄めに切ります(いちょう切り)。
2)切ったなすは熱湯で1分ほど茹でて、水に取り、冷めたら水を切ります。
3)ごまをすり鉢で形がなくなる程度にすります。4)すり鉢に白味噌を加え、
みりんか砂糖で調味します。5)なすを冷蔵庫でよく冷やしておいて、食べる
直前にすり鉢に加えてまぜるか、または、なすをごまあえにしてから、冷蔵庫
でよく冷やすかします。6)1人前ずつ小鉢に盛り分けて、できあがり。

もったりした甘みのあるごまあえです。なすは湯がいて水を切っていますので、
そんなに水が出るわけでもなく、あえ衣を少し伸ばすぐらいの水分を出して、
落ち着きます。塩分は白味噌だけですので、それを考えて白味噌の量を決めて
ください。なすは分厚く切っても可。多少、水分が出るかもしれませんが。


(2005年8月17日)  【関連書き込み

「野菜炒め〜梅味」
いつも食べている野菜炒め。これを夏らしくサッパリとした味に仕上げようと、
梅干しを混ぜてみました。梅干しは2人前につき1個ぐらいでしょうか。種を
取り、包丁でたたいてペースト状にします。フライパンで、まず牛でも豚でも
肉を炒め、肉の色が変わったら、炒まりにくい野菜から順に入れて炒め続け、
お好みで香辛料、それから塩、酒、ごく少量の醤油で、薄めに味を付けておき
ます。仕上げにたたいた梅を入れ、よく混ぜ合わせて火を止め、できあがり。

塩分を塩だけで味付けすると、あっさりした炒めものになりますが、そこに梅
の風味と若干の塩分が加わります。醤油は風味付けとお考えください。野菜は
キャベツ、たまねぎ、にんじん、ピーマンなど、あり合わせのものでOKです。
おろししょうがを加えて作ったことがありますが、あまりしょうがが勝ちすぎ
ると梅と打ち消しあう感じがしました。どの香辛料も控えめが無難でしょう。

バリエーションとして、酢豚を作るとき、醤油と酢を若干減らし、その分の塩
分とすっぱさをたたいた梅で補う、というのもお試しください。一風変わった
酢豚になります。なお、残った梅干しの種ですが、料理中にしゃぶっていれば
いいでしょう。歯に自信のある人は、種を割って、中の「天神さん」もどうぞ。


(2005年8月20日)  【関連書き込み

「大和豆」
8月24日は地蔵盆です。お地蔵さんのよだれかけも、この日に合わせて新調
されたり、お社(祠)もお供え物でにぎやかになったりします。それと、地域
の広場や公園にやぐらが組まれ、この日の晩には子どもからお年寄りまでうち
揃って盆踊りに興じます。江州音頭や河内音頭だけでなく、わたしが小さい頃
はオバQ音頭などもありました。今はドラえもんか、ハム太郎か……(^_^;)。

この、盆踊りの参加賞が、たいてい「やまとまめ」でした。踊りがひと区切り
つくと、親や大人が「あそこの世話人さんのトコへ行って、豆もろといで」と
言うのです。大和豆というのは、茶色く熟したそらまめを煎って、はじけさせ
ただけのもので、塩味も何もついていません。それが、薄い紙で作った小さな
袋に入って、口を閉じてあります。大和豆といえば、海水浴のときに豆を小袋
に入れて海水パンツの中に入れ、泳いだあと浜に上がってふやけた豆を食べる、
などと聞いたことがありますが、それほど素朴な「昔のおやつ」でした。

「はじき豆」ともいうそうです。煎らずに揚げたものは「いかり豆」で、この
ほうがおつまみとして有名かもしれません。昨今は駄菓子の袋菓子もあり、必
ずしも大和豆が参加賞というわけでもないでしょうが、わたしはむしろ大人に
なってから、素朴さが好きで時折買って食べています。何粒かははじけ損ねた
豆があり、皮をむくのに苦労しますし、また噛んでも硬い豆です。でも、噛め
ば噛むほど味が出るのと、何より無添加なのがいいですね。郷愁を誘います。


(2005年8月23日)  【関連書き込み

「ちゃんちゃん焼き」
語源も正式なレシピも知りませんが、鮭と野菜を鉄板で焼き、味噌で味付けし
てバターの風味を加えたものを「ちゃんちゃん焼き」と呼ぶそうです。アウト
ドアで豪快に鮭の片身を使って作ればいいのでしょうが、ここに書いたのは家
庭用のレシピ、というより、わが家の日常用・簡略版の献立です。好きな野菜
を加えたり、味付けも多少は変えられますので、自分なりにお試しください。

材料:鮭2切れ(2人前の場合)、キャベツ(せん切りにして鮭を上から覆え
  るぐらいの量)、他の野菜少々(にんじん、ピーマン、たまねぎ、もやし、
  えのき茸など)、味噌(赤味噌か合わせ味噌)、バター、サラダ油各適量。
手順:1)鮭は一口大に切り、皮と小骨を取る。2)フライパンに油を多めに
  入れ、鮭を中火で焼く。3)鮭の上にバター適量を乗せ、せん切りにした
  野菜を全部乗せて少し火を弱め、ふたをして蒸し焼きにする。4)キャベ
  ツなどがしんなりしたら、味噌を少量のお湯で溶いて(伸ばして)、野菜
  の上から掛け回し、ふたを取ったまま焼き続ける。5)香ばしい香りがし
  てきたら、鮭の身を崩さないように全体をさっくり混ぜて、できあがり。

「他の野菜」は無くても可です。ふたは、キャベツ主体の野菜を蒸し焼きにす
るために使いますが、最後までふたをしたままだと水っぽくなるので、水分を
飛ばすために、ふたを取って仕上げます。常に鉄板に触れている鮭が焦げ付か
ないように、油は「引く」よりも多めに使いました。小骨とともに口当たりが
気になるウロコが混ざらないように、皮を取りましたが、皮は皮だけでパリッ
と焼いて食べるといいでしょう。塩分は、生鮭を使う場合は、味噌だけで加減
することになりますので、使う量に注意してください。なお、蒸し煮した野菜
は充分に甘みがあるので、砂糖やみりんは使わないほうがいいと思います。


(2005年8月27日)  【関連書き込み

「梅とんかつ」
暑いうちに梅メニューの第2弾を書いておきます(^_^;)。というより、わが家
ではこちらのほうが元祖なのですが……。最近では、くずれ梅、つぶれ梅とか
言って、お徳用の梅干しが売られていますし、さらに減塩とかはちみつ味とか、
昔のように四角い塩の結晶ができるような塩辛い梅は、手作りでないとお目に
かかれなくなりました。適度な塩分なればこそ、料理にも使いやすいのです。

梅は例によって包丁でたたいておきます。これを薄切りの豚肉2枚の間に塗り、
パン粉を付けて揚げます。薄切りなら中温の油で大丈夫です。きつね色になっ
たら出来上がりです。火を通しすぎると、梅が煮えてしみ出し、油がはねたり
する危険性があります。ただし、厚めの肉に梅を挟む場合は、温度を中温より
やや低めにして、じっくり揚げるほうがいいでしょう。ソースなど何も付けず
に食べて、充分に美味しいと思います。薄切りならカリカリに仕上がります。

フライの時の衣ですが、ふつうは「小麦粉−卵液−パン粉」の順に付けるので
しょうが、わたしはケチとズボラがあいまって(^_^;)、「小麦粉を水で溶いた
もの−パン粉」の2段階に簡略化しています。卵を使わなくても済みますので、
後始末が楽です。その際の小麦粉は、てんぷらを揚げる時よりも、やや濃いめ
に(もったりと)溶いておくほうが、パン粉がよく付きます。精進料理では卵
でなく長芋を使うそうですが、その上を行くような感じでもありますね (^o^)。


(2005年9月1日)  【関連書き込み

「冷やしたぬきそば」
久しぶりに東京へ出張し、冷やしたぬきそばを食べてきました。これは何物か?
浅い鉢に冷やしたそばを盛り、天かす(揚げ玉)、きゅうりのせん切り、かま
ぼこのせん切りなどを乗せて、冷たいそばつゆを掛け回したものです。東京の
冷たいそばでも、もりそばやざるそばは「付け麺」方式ですが、この冷やタは
「ぶっかけ」方式でいただきます。東京では揚げ玉(単に「揚げ」とも言う)
を入れたそば・うどんが「たぬき」ですが、冷やタの場合はきゅうりなども入
り、そばバージョンの冷麺(冷麺も「冷やし中華」と言う)の趣でもあります。

粋なそばの食べ方として、せいろ(ざる)から麺をつまみ上げ、つゆに下1/3
から半分程度を浸すだけで、ひと口にすすり上げる、というのが言われます。
麺自体の味を楽しむためか、つゆがダダ辛いからか知りませんが、ともかく、
そんな普通のざるそばなどの食べ方に比べ、この冷やしたぬきは「ざんない」
です。麺を高く掲げて食べていては、麺に絡まない天かすは、いつまでたって
も食べられません。勢い、天かすの多そうなところを麺で包み込むようにして、
一気に口に入れるものの、量が多すぎるので麺を途中で切るはめになります。
まったく、ガッついているように見えてしまうのが、情けないところです。

東京で単身赴任をしている間に、シンプルなもりそばが気に入り、のりが邪魔
になってざるそばを敬遠するようになりましたが、それでもたまには「モリよ
りも栄養があるだろう」と思い、夏場は冷やタ(たいていは大盛り)を食べて
いました。でも、よく考えれば、そばの麺は“出しガラ”(^_^;)。栄養を言う
なら、やっぱり「そば湯」でしょう。安い立ち食いの店でも、ちゃんと1人前
の湯桶(ゆとう)に入れてそば湯を出してくれるのには、関西人ながら感心し
ました。負け惜しみを言うなら「そばは田舎の食いもンじゃい」ですが(^o^!)。


(2005年9月4日)  【関連書き込み

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