おリョオリのうた 2006年・新春
「黒豆」
今年も残りあとわずかとなりました。わたしは今晩、正月用の黒豆の準備を始
めました。はなだんなの「お正月クックブック」にもあるように、豆250g
に対して水を1500cc沸かし、200gの砂糖(醤油と重曹各少々も)を
溶かして再度沸騰したところへ、洗った豆を入れ、そのまま火を切ってひと晩
置いておくのです。あしたは、豆が煮汁から少し顔を出すぐらいまでとろ火で
煮き、火を切って煮汁の中で味を含ませます。その黒豆の煮え加減を気にしな
がら、煮〆を順番に作っていくのです(今年は勤務の関係で1日前倒しです)。

豆を煮くときには、豆が「踊らない」ように、せいぜい液面がゆらゆら揺れる
程度に、火加減やふたの開け加減を調節して保ってください。踊らせると、皮
が破れて浮遊したり、身が煮崩れしたりします。煮汁が減っていくとともに、
砂糖の濃度が上がります。最近は健康志向で「甘さを控えめに」とよく言われ
ますが、煮豆のときの煮汁の濃度は、先人がいろいろ試した中で一番良い条件
なのでしょうから、適当に変更しないほうがいいと思います。煮上がったら、
室温ぐらいに冷めるまで、ふたをして静かに、鍋のまま置いておきましょう。

他の素材は少々キズものでも半端ものでも気にしないわたしですが、この黒豆
だけはいつも「特大粒」を選んで買います。煮き方は「土井の黒豆」で有名な
故・土井勝さんの方法でしょうか、しわが寄らず、とても軟らかく仕上がりま
す。煮汁にも、黒豆の皮の黒い成分(ポリフェノール?)が溶け出していて、
ちびりと味わうのも楽しいものです。なお、上記の「クックブック」は、わが
家のお正月の行事や風習を書いてあるとともに、わたしの「買い物メモ」でも
あります(^_^;)。今年もいろいろ買い揃えました。あしたは1日台所に居ます。


(2005年12月29日)  【関連書き込み

「煮〆」
一般的に、作り置きのものより作りたてのもののほうが美味しいですが、この
点からお節料理に意味を見いだすとすれば、正月から煮炊きの手間をかけない、
ということだと思います。つまり一種の保存食ですが、わが家のは根菜の煮物
が中心で、良く言えばヘルシー、別の言い方をすれば栄養が偏っている、かも
しれません。ともかく、伝統のメニューを受け継いでいくことを主眼に、毎年
同じものを作っています。野菜自体の味は変わってきているかもしれませんが。

薄味で煮くものから順に、高野豆腐(角切り)、たけのこ(輪切り・乱切り)、
くわい(慈姑=芽を残して皮をむき、丸ごと)、れんこん(輪切り)、こんにゃ
く(角切り)、金時にんじん(輪切り)、ごぼう(5cm程度の棒状)。これら
を1つの鍋で順に作り、高野豆腐が煮けたら皿にとって、次に鍋に水と調味料
を足してたけのこを煮く、という手順です。冷めたら適当に一〜四の重に詰め
ていました。他に重箱に入るものは、かまぼこ(適当な厚さに切る)、厚焼き
(同=カステラかまぼこのようなもの?)、棒鱈の煮付け(乱切り)、ごまめ
です。かずのこや黒豆は別の器で、栗の甘露煮は瓶ごと、食卓に上りました。

れんこん、ごぼうは、酢れんこんや叩きごぼうにする家もありますね。棒鱈は
面倒なので、近年は省略です(^_^;)。出来合いのでもいいのですが、高いので、
その代わりと言っては何ですが、正月明けにはよく、京芋と鱈を煮付けて芋棒
のようなものを作ります。かずのこも、頂かない限り、買ってまでは加えない
ようになりました。……とすると、魚系はかまぼことごまめだけ、ということ
になりますが、なあに、黒豆からは充分に良質のたんぱく質が摂れますので。


(2005年12月30日)  【関連書き込み

「年越しそば」
わが家の今年の年越しそばは、にしんを乗せたかけそばでいただきました。大
阪で「そば」と言えば、普通はかけ(温そば)を指しますが、東京に単身赴任
していたときは、そばの本場?ということもあり、半生麺を買ってきて茹で、
もちろん盛り(冷そば)でいただきました。年越しそばに関しては、食べ方は
自由で、細く長い麺としてのそばよりも、砂金だったか金箔だったかと関わり
があったかのように記憶しているそば粉を食べることに、意義があるようです。

かけそばのつゆは、基本が醤油1:みりん1:水10。つまり、4人前として
醤油100cc、みりん100ccに水1リットルを混ぜ、全部で1200ccにして沸かせば
出来上がりですが、わたしの味覚では醤油を1割程度減らし、みりんは2〜3
割減らし、その分の味の補いとして、だしの素少々、昆布茶小さじ1杯ぐらい
に、酒20〜30ccを入れると、ちょうど良い加減になるようです。しかしこれは、
醤油の銘柄によって塩分などが違うので、調節が必要です。濃い口だけでなく
うす口醤油を使うなら、なおさら塩辛くならないようにしないといけません。

整理すると、醤油90cc+みりん70cc+酒30cc+水1000cc=かけつゆ1200cc弱で、
だしの素と昆布茶で塩分等を補います。具は、年によって、えび天だったり、
にしんの甘露煮だったりしますが、特にこだわりはありません。大みそかは、
そばを食べる以外は決まりはないので、他のおかずも自由。お節料理を大量に
作っていた子どもの頃は、お重に入りきらなかった煮〆がおかずになったこと
もありました。もうそうなると気分はお正月。除夜の鐘が待ち遠しかったです。


(2005年12月31日)  【関連書き込み

「白味噌雑煮」
雑煮を辞書で引くと「餅入りの汁」だそうです。実際、丸餅か角餅か、焼いた
餅か焼かない餅か、味噌仕立てか澄まし仕立てか(ここまでの「組み合わせ」
で8通り)、さらに味噌は白味噌か合わせ・赤味噌か等々、ニッポンにはさま
ざまな雑煮があります。わが家は関西風の白味噌雑煮で、焼かない丸餅を使い
ます。具も千差万別ですが、わが家では小芋、輪切りにした雑煮大根、角切り
の焼き豆腐です。たいてい、年末のうちに具を下茹でして準備しておき、当日
は各自に「餅の数」を聞いたあと、味噌汁のように作って、餅を少々煮ます。

3が日は、小梅と白昆布を入れた煎茶(おおぶく茶=大福茶 or 皇服茶)から
「お祝い」の食事を始めます。前述の「煮〆」もそうですが、この雑煮もたい
へんあっさりしており、わが家の、というより、昔の正月はこの程度の「ごち
そう(ごっつぉ)」だったのかと思います。補足すると、使う白味噌は象牙色
のいわゆる西京味噌、雑煮大根はせいぜい切り口が10円玉大の、中抜き大根
より少し太い程度の大根で、正月向けとして特別にスーパーなどに並びます。

白味噌は普段は、しじみの味噌汁か、「ぬた」か、田楽か、魚などの漬け床に
しか使いませんので、子たちは白味噌の雑煮をとても喜びます。もっと普通に、
餅を入れてでもいれなくても、白味噌の味噌汁を作ればいいのですが、ごはん
に添える汁物としては甘い仕上がりになり、具も選ぶので、めったに作りませ
ん。クリームシチューの和風版として、鶏肉やブロッコリー、芽キャベツ、小
たまねぎなどを具にして白味噌の味噌汁を作っても面白いかもしれませんね。


(2006年1月1日)  【関連書き込み

「澄まし雑煮」
正月2日は、わが家では「名(菜)が上がりますように」と、具の水菜を高く
掲げて念じてから食べる澄まし雑煮を作ります。作り方はいたって簡単で、焼
いた丸餅とお椀に入る程度の長さに切った水菜を、だしと醤油で作った澄まし
汁の中に入れて、ごく短時間煮たものです。水菜のシャキシャキ感を保つため
に、加熱は最低限にしてください。それでも、餅や餅の焦げが少しは汁に溶け
出して、いくぶんコクが出ます。「軽い」ので、餅が多く食べられる感じです。

わが家のお節料理・雑煮の中で、青菜を使う異例のメニューです。もっとも、
水菜は冬には「鯨のはりはり鍋」などでおなじみですし、漬物や、最近ではサ
ラダでも使います。「名(菜)が上がる」という駄洒落も、他の煮〆一般にも
通ずるものですし、縁起をかついだ行事としてあってもいいのですが、比較的
新しいような気がします。勿論、ここ最近考え出されたということではなく、
芽が出る「くわい」や、先の見通せる「れんこん」などと比較しての話ですが。

この雑煮は、雑煮と言うにはあまりにもシンプルで、普段に食べてもいいよう
な感じですが、物足りないかもしれません。水菜を多く使って、しかもシャキ
シャキした感じを残そうと思うと、合わせる具も限られてきます。「はりはり
汁」で紹介したように、牛や鴨を使うか、とり、薄揚げなどの油の出る材料、
もしくは煮込むとつるんとした食感になるしめじなどはどうでしょうか。いず
れも、水菜は仕上がり時に鍋に入れ、すぐ火を止めてできあがりとなります。


(2006年1月2日)  【関連書き込み

「醤油焼き餅」
正月の行事は3日で終わり、祝い箸は小正月・節分に向けて一旦仕舞います。
わが家では鏡餅は3日で下げ、4日の朝から切り分けてしまっていました(今
はパックなので、食べる時にしか切りませんが(^_^;))。串柿や葉付きみかん
は子たちのおやつ、だいだいは鍋物のぽん酢用になりました。切り分けた餅は
3が日に食べた小餅の残りとともに餅箱に入れて、かびが来ないように寒い所
に置いておき、1か月ぐらいかかって食べました。小さい頃は練炭火鉢があり、
網を乗せて、弱火でこんがりと、中が空洞になるまで焼いたりしたものです。

焼いた餅は、醤油を付けて2度焼きするのが普通でしたし、わたしはカリカリ
に焼けた醤油餅が好きでした。ほかには砂糖醤油(これは2度焼きしない)、
焼いた餅をお湯にくぐらせて砂糖入りきな粉をまぶした「あべかわ」。また、
お椀に焼いた餅を入れ、塩少々と熱いお湯をかけてふうふう言いながら食べま
した。ふやけた加減と香ばしさが、お茶漬けに入れるあられのような感じです。

「餅は貧乏人(乞食)に焼かせろ」とは、こまめに裏返して焼くほうがうまく
焼けることを指したものですが、わたしはかなり上手でした (^o^)。それでも、
たまにうっかり焦がしたときは「大名!」と言って笑っていました。わたしが
焼くと、こぶまで焼いてさらに膨らませ、カリカリにしてしまうので、「おま
えのはオカキやな」と父に言われていました。それもこれも、火鉢と(餅焼き
網の高さを調節するのに使っていた)金ばさみがあったればこそ、なのですが。


(2006年1月4日)  【関連書き込み

「七草がゆ」
「ねぎ・三ツ葉・水菜・小松菜・ほうれん草・菊菜・すずしろ=鍋の七草?」。
それはともかく、7日は七草。七草がゆを食べる日とされています。でも、旧
の1月7日ならいざ知らず、ひと月も早い新暦の1月7日に若葉が揃うはずも
ない。……そこでスーパーが7種類をセットで売り出すことになるのですが、
みなさんは「ほとけのざ」など、野原に生えていても現認できますか? わた
しは分かりません。七草に似た苦い草もあるようで、素人は注意が必要です。

われわれがこの季節に青菜入りの粥を賞味するなら、上に書いた手に入りやす
いもので試してみればいかがでしょうか。すずしろ(大根)だけでなく、にん
じん、小かぶの葉(すずな)、わかめ、ブロッコリーのつぼみ・軸も入れて、
味噌味・卵とじの雑炊(おじや)にしてみると、家族には好評でした。伝統の
行事を比較的大切にしているわたしが、七草がゆに関しては破格なことをする
のは、わが家に七草の風習がないからですが、新たに興すなら、新暦の七草で
は無理のある食材を揃えるより、合理的にビタミンを摂ろうというわけです。

もともとは「なーなくさ・なずな、菜っ切り包丁・まーな板……」と囃しなが
ら、青菜をみじん切りにしたという、まじないのようなことをしたようです。
「青物の乏しい冬に栄養補給を……」などというのは、現代人の後付けの解釈
なのでしょう。この日は5節句のうちのひとつ「人日(じんじつ)」。松の内
を7日間とする地方では、この日を限りに門松・〆縄を外すことになりますね。


(2006年1月7日)  【関連書き込み

「福飴」
「商売繁昌で笹持って来い!」……えべっさんの掛け声です。今年は下の子を
連れて、宵戎の9日に近所の戎神社にお参りしましたが、わたしが小さい頃は
やはり地元の大阪・堀川戎に行っていました。自営業でしたので、笹を買い、
縁起物の「吉兆」を付けてもらって、1年間家に飾っていました。笹のほかに
買ったのが、福飴と延命飴です。福飴はお多やんの顔が出る金太郎飴で、福を
呼び込むもの、ねじ飴の延命飴は、節分まで置いておいて食べるものでした。

このような細工飴は作るのに技術と手間が要るようですが、砂糖(または糖化
させた澱粉)だけの単調な味なので、ぱくぱく食べるものでもなく、たいがい
溶けかかった頃にセロハンをようようはがして食べ終えるといった具合でした。
堀川戎の露店でも、天神橋筋商店街の和菓子屋でも、外側が赤と白の2種類の
福飴を売っていましたので、1人あて2本。食べきるのも大変でした(延命飴
は赤い筋のと緑の筋の2種類)。ま、行事と割り切って、食べていましたが。

さて、近所のえべっさんには福飴は売っておらず、りんご飴やとうもろこし、
たこ焼き、いか焼きなど普通の露店ばかりです。5才の子どもには高いものや
熱いものはどうかと思い、どんぐり飴を買ってやりました(1ケ30円)。本人
が5つと、おじいちゃんの家にお泊まりに行っているお兄ちゃんに2コ。帰り
の道々、1つだけ口に入れて、しっかり歩いて帰りました。飴の言われよりも、
子どもが満足してなめる飴は、福飴以上に御利益があるかもしれませんよね。


(2006年1月9日)  【関連書き込み

「かぶら蒸し風みぞれ煮」
あり合わせで作る、かぶら蒸しモドキです。もし、「鯛の刺身が余っている」
などという方がありましたら、小鉢に何切れか入れてラップをして電子レンジ
にかけ、火が通ったところへ、このみぞれ煮を掛けていただければ、なおさら
かぶら蒸しに(気分が)近づきます。なお、材料の中の平天(さつま揚げ)は、
多少油分がほしいかなと思って加えました。そうでないあっさり味がお好きな
向きは省いていただいて構いません。とは言いつつ、フレンチフライドポテト
を仕上げに加えてもいいかな、などと、半ば本気で思っておりますが(^_^;)。

材料=2人前:かぶら(小かぶなら2玉)、しめじ半株、平天1枚、にんじん、
  みつば各少々、だし200cc、醤油、酒各適量、みりん少々、かたくり粉。
手順:1)かぶらは皮をむき、鍋に加える直前におろす。しめじはさばく。平
  天、にんじんは細く切る。みつばは2〜3cmに切る。2)鍋に、だしと
  しめじ、にんじんを入れ、薄めの味付けで煮る。3)煮えたら平天を加え、
  おろしたかぶらを汁ごと入れて、ひと煮立ちさせる。必要なら味を補う。
  4)火を弱めて、水溶きかたくり粉でとろみを付け、強火にして煮立った
  ら、みつばを加えて火から下ろす。小鉢によそい分けて、できあがり。

冬向きの温かいメニューをどうぞ。なお、ご愛顧いただいております「おリョ
オリのうた」は、おかげさまでまもなく1周年を迎えます。「料理歳時記」な
ればこそ、1年でひと回りで、書くことがなくなるはずですが、書き漏らした
ことがあったり、昨年2〜3月に長く休載したりしましたので、もう少し書き
継ごうと思っています。このメニューなどは、はなだんなの専売特許ではなく、
みなさんに試していただいてこそ(ちょっと冒険かもしれませんが(^o^) )、
だと思っておりますので、今後ともどうぞご贔屓に、よろしくお願いします。


(2006年1月14日)  【関連書き込み

「あられ(きりこ)」
先日、大阪市内の実家に顔を出したとき、母が「去年のお餅やけど」と言って
細かく割れた硬い餅を出してきました。「揚げて食べればよい」と親戚に貰っ
たそうですが、揚げるのは面倒とのこと。そこで、できるだけ細かく手で割り、
フライパンで弱火で煎りました。少し大きめのものは、電子レンジに掛けると
10秒かそこらでプハッ!と膨らみますので、それも加えましたが、カラカラ
に煎って少しきつね色になったところへ、醤油をじゅわっと回し掛けました。

そのまま湯気が収まれば火を止めて、醤油あられのできあがり。母は「これは
昔懐かしい『きりこ』や」と言っていました。多少、煎り足りずに硬いままの
ところもありますが、そこはそれ、かえって手作り感がにじみます。熱いうち
にいただくと、香ばしい醤油の香り。醤油が掛からなかった部分は、まったく
素朴な素焼きです。パック餅全盛の昨今にあっては、このような餅はなかなか
手に入らないでしょうが、もしあれば、気長にごく弱火で煎ってみてください。

なお、残りの餅を貰って帰って、家でもやってみました。ただし、めんつゆで
味を付けてやろうと、仕上がりに大量のめんつゆをフライパンに掛けたら、餅
が軟らかくなってくっついてしまい、大失敗に終わりました(^_^;)。やはり、
液体分は少量に限るようです。それでも、子たちには一定の評価を得たので、
さてわが家のお鏡、パックを解いて薄切りにするとポロポロに乾燥するでしょ
うから、それを幸いに『きりこ』にしようかどうか、迷っているところです。


(2006年1月15日)  【関連書き込み

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