おリョオリのうた 2006年・初夏
「ほうれんそうのおひたし」
小さい頃、おひたしというと、大きなすり鉢でごまをいっぱい擂るのを手伝う
ことから始まりました。すりこぎで擂るうちにごまが周囲に行ってしまうので、
中心に寄せ、また擂って……。パサパサのすりごまができたら、砂糖と醤油を
入れてよくごまと混ぜ合わせ、そこへ湯がいて刻んだほうれんそうを入れる。
「もう擂ったらあかんで」とよく言われました。すりこぎに付いたすりごまを
ほうれんそうでぬすくって、あとは菜箸であえてできあがり。盛り分けたあと
のすり鉢には、ごはん少しを入れて混ぜれば、ごまあえごはんのできあがり!

ほうれんそうは株の根元を落とし、1本1本をばらばらにしたあと、大きく葉
と軸に分け、多めのお湯でまず葉を茹でます。しんなりするぐらいで水に取り、
ざるに揚げます。続いて軸を茹で、水に取ってざるに揚げて、いずれも水気を
絞ります。鍋とボウルには土がたくさん落ちていて、ほうれんそうには残って
いないはずです。これらを刻んで、濃いめの味付けのすりごまであえます。水
くささを取るために醤油を少量たらして絞る「醤油洗い」は、必要ありません。

もう一つ。「浸せば『お浸し』」という考えで、茹がいたほうれんそうを食べ
やすい長さに切り、だしのよく利いたそうめんつゆに浸して、1時間ほど冷蔵
庫でなじませましょう。食べるときにめいめいの鉢に盛り、つゆを適量かけて
出します。ごまを1つまみ、指でひねりつぶしながら上からかけると、さらに
風味が引き立ちます。こちらのあっさりした「お浸し」も、最近よく作ります。


(2006年5月8日)  【関連書き込み

「アイリッシュ・シチュー」
羊肉(ラムやマトン)と、じゃがいも、たまねぎ、にんじんを煮込んだ塩味の
澄まし仕立てのスープです。フランスのポトフのようでもあります。アイルラ
ンドの家庭料理で、具は大ぶりに切ってあって素朴な味わいです。羊肉が手に
入ればいいですが、なければ豚のヒレ肉で代用しましょう。もちろん味わいは
変わってしまいますが。以下、紹介するのも豚バージョンですが、あしからず。

野菜は、じゃがいも小ならそのまま。中や大、それににんじんも、その大きさ
に揃えるか、親指と中指で作った輪ぐらいに切ります。たまねぎは横・縦・縦
の8ツ切りでもいいでしょう。小たまねぎ(ペコロス)なら、そのままです。
豚ヒレ肉の塊も、野菜に合わせて大ぶりに切り、塩・こしょうを揉み込んでお
きます。お好みでナツメグなどの香辛料もどうぞ。鍋に人数分×150〜200cc
のお湯を沸かし、肉を1切れずつ入れて、素早く表面を固めます。最後のほう
は肉同士がくっつかないように、少しお湯をかき混ぜましょう。次に沸騰した
ら、にんじん、じゃがいもを入れ、また沸騰したら、いったん火を切ります。

このあと、「2〜3分沸騰させては10〜15分火を切る」というのを何回か
繰り返すと、肉も野菜も煮えています。たまねぎと、塩による味付けは、適当
なタイミングで加えてください。深皿に具を盛り付け、煮汁を適当に張って、
できあがりです。素朴さが売り物ですが、刻みパセリ程度はあってもかまいま
せん。スープストックやコンソメなどは加えず、塩と香辛料だけの味わいです
から、肉そのものの味がします。羊を使えば、それなりにウマいですよ (^_^)。


(2006年5月13日)  【関連書き込み

「ソーミン・チャンプルー」
沖縄式そうめん炒めですが、焼きそばより焼きビーフンに近いかもしれません。
主食というには少し味が濃いので、おかずにすればいいでしょう。かつて沖縄
で「チャンプルー用そうめん」をお土産に買って帰ると、なんと産地は播州で
した。そうめんよりも少し太く、冷や麦ぐらいかなと思いましたが、今回使う
のはどちらでもかまいません。そう言えば、イタリアのパスタだって、スパゲ
ティだけではなく「天使の髪の毛」と呼ばれるような細麺もあるそうですね。

材料:そうめん(1人分50g程度)。キャベツ、にんじんなど野菜適量。ツナ
  缶詰(油漬けorスープ漬けor味付けフレーク)。油、醤油、胡椒各適量。
手順:1)そうめんは30秒ほど短めに茹で、水でぬめりを洗って、ざるに揚げ
  ておく。2)野菜を細切りして多めの油で炒める。サラダ油でもごま油で
  もよい。3)そこへ缶詰のツナを適量入れて炒める。味付けフレーク以外
  なら醤油少々を加え、お好みなら胡椒で調味する。4)火を切って、茹で
  たそうめんを入れ、火を切ったままよく混ぜる。足りなければ油を足す。
  5)中火から弱火にして、うっすら湯気が立つまで、静かに混ぜながら炒
  める。6)そうめんが鍋にくっつかないうちに火を切り、盛り分ける。

おかずなら、そうめんは50g(1束)でいいと思います。もっといっぱい食べ
てやろうという人は、倍量でもかまいませんが。固めに茹でて洗っておくと、
冷やされることもあって、延びるのがある程度防げます。ただしこの冷えた麺
をそのまま炒めると、くっつきやすいので、まず油にまみれさせてからにしま
しょう。あとは温まったら大丈夫。野菜は、もやし、きくらげ、たけのこなど
何を使ってもかまいません。冷蔵庫のあり合わせで工夫してみてください。


(2006年5月19日)  【関連書き込み

「押しずし」
箱ずし、こけらずし、大阪ずしなどとも呼ばれます。酢めしの上に薄く切った
具をトッピングし、それを押さえて圧着させたものです。江戸の早ずし(握り
ずし)は一口大に握った酢めしに具を乗せます。こちらもごはんを多少は圧縮
しますが、それでも具を乗せると即座に食べられます。それに比べて押しずし
は、圧着するまでしばらく時間を要します。四角い箱に押したすしは、二口大
ぐらいの直方体に切って供されます。なんだか、英国の「午後のお茶(アフタ
ヌーンティー)」に付き物の一口サンドイッチのようじゃありませんか (^_^)。

実家にはありますが、わが家には押しずし用の木枠がないので、浅い保存容器
(タッパーウエア)を使いました。底に具を敷き詰めて、酢めしを半分ぐらい
まで入れ、ならした所に海苔の佃煮をバターナイフで塗りつけます。本来なら
しいたけのうま煮を使うのでしょうが、簡易バージョンなので省略です。さら
に酢めしを入れて、少し盛り上がるぐらいにしたら、押しつけながらふたをし
て、1時間ほど置きます。その後、ふたをしっかり持ったまま、全体を上下に
力強く何回か振ります。最後にふた側に強く振れば、具ごと全体がふた側に寄
り、ふたを下にして静かに開ければ、押しずしができている……はずですね。

ばらけたら、適当に繕ってください(^_^;)。なお、具は、酢〆の鯖やこはだ、
炒り卵をまな板で細かく刻んだもの、まぐろの味付け缶詰、スモークサーモン
などでいかがでしょうか。かにかまぼこを半分に裂いたものや、ブロッコリー
のつぼみを茹でて粗く刻んだものなどがあるとカラフルです。ごはんの中ほど
に海苔の佃煮を使いましたが、酢めし自体にごまを混ぜるのも風味が出ますね。


(2006年5月20日)  【関連書き込み

「ウインナー・シュニッツェル」
本来は、薄く延ばした子牛肉のカツです。それを今回は薄切り牛肉で作ります。
衣が薄いせいか、かなり肉が縮みます。でも薄切りなので硬くなりませんし、
適度にサクッと仕上がるという利点もあります。本場のものは皿からはみ出す
ぐらい大きいと聞きますが、スーパーなどで買う肉のサイズでかまいません。
何枚も焼けば(揚げれば?)いいでしょう。かぼちゃ、ピーマン、なすなどの
素揚げ(油焼き)を付け合わせにすると、フライパン1つで作れてしまいます。

手順:1)パン粉は細目のものを用意します。粗ければ、ビニール袋に入れて
  すりこぎで叩き、細かくすればいいでしょう。2)フライパンに油を深さ
  数ミリ程度入れ、薄切りした野菜を中火で素揚げします。3)薄切り牛肉
  にパン粉をじかに付けます。表面に薄く付くだけですが、かまいません。
  パン粉に胡椒少々を混ぜておくと、風味が付きます。4)パン粉を付けた
  肉を、フライパンで何回にも分けて焼きます。肉を入れて20〜30秒で
  周囲の色が変わり、少し縮みますので、箸などで裏返します。5)両面が
  きつね色になれば皿に取り、ウスターソースなどをかけていただきます。

何回も焼くうちに油が減ってきたら、そのつど足してください。「揚げる」と
いうより「焼く」感じです。薄切りなので、両面焼いてもせいぜい数分です。
衣は、小麦粉−卵−パン粉と付けて厚くしてもいいですが、肉が薄いので気が
とがめますね。紙カツとして味わうなら、細かいパン粉だけで充分です。肝心
の肉は、さほど高級でなくても大丈夫です。薄切りの豚肉でも作れそうですね。


(2006年5月27日)  【関連書き込み

「ゴーヤー・チャンプルー」
言わずと知れた沖縄料理の代表格で、苦瓜の炒め物です。わたしも昨今の沖縄
ブームで初めて苦瓜(ゴーヤー)を口にしました。小さい頃はレイシと呼んで
いて、実の形が面白いという程度の植物でした。そう言えば「食べたら苦い。
食べられへんで」と言われていたように思います。それを今では薄切りにして
炒めて食べているんですから、不思議ですね。年を取ったんでしょうか(^_^;)。

苦瓜は2つまたは4つに割り、スプーンでわたを掻き取ります。わたしは4つ
割りにして5ccの計量スプーンを使うことにしています。これを薄く切って、
フライパンで油で炒め、できれば小さなダイスに切った厚揚げ(または木綿豆
腐)を炒め合わせ、粉がつおで調味したあと、溶き卵、醤油で仕上げます。切
り方は、分厚めのほうが好きな方はお好みでどうぞ。具も、ツナ缶、もやし、
豚肉、にんじんなど、適当に加えても可。何せ「チャンプルー」なんですから。

苦瓜は、太く輪切りにして、じっくりとてんぷらに揚げるとホクホクした味わ
いになります。つゆよりも塩(沖縄の島まあすなど)で食べるのがいいでしょ
う。ほかにも、漬物にしたり、生のままおろして食べたりもできるそうですが、
それは上級編ですね。薄く切れば苦みが抜けやすくなりますし、油と合わせる
と食べやすいので、それぞれ食べ方を工夫して、南国の味を試してください。


(2006年6月7日)  【関連書き込み

「おろしきゅうりの冷や奴」
きゅうりなんて物、使うときは1本まるまる使い切ればいいと思うのですが、
時折冷蔵庫に半本残っている、なんてことがあります。そんなときは、浅漬け
のもとがあれば半日漬け込んだり、夏なら冷や汁の具にしたりするのですが、
すりおろして、ほのかな苦みを楽しむという方法もあります。冷たくした冷や
奴の上に、おろしたきゅうりを乗せ、めんつゆを適量かければいいでしょう。

冷や奴はふつう、かつおぶしを掛けるか、ねぎ、おろししょうがなどの薬味で
いただくかしますが、いつもいつもの味に飽きてきたときに、ちょっと変化を
つけるのにお試しください。皮ごとおろして問題ないと思いますが、子どもた
ちなど、苦みが苦手だという人がいるのなら、皮むき器(ピーラー)で皮を部
分的に(縞目に)、または全部むき、それからおろしても、まあいいでしょう。

野菜サラダに豆腐を加えた「豆腐サラダ」に似た趣かもしれません。それより
も簡単に、野菜と豆腐の組み合わせを楽しめるメニューです。大根をおろすと
「みぞれナントカ」という料理名がよく付きますが、きゅうりをおろしたもの
は何と呼ぶのでしょうか。ともかく、冷や奴の白にきゅうりの緑が映えて、夏
らしい、涼しさを呼ぶ一品になります。初めて作ったとき、家族は「いったい
何だろう」と思ったそうですが、今では子たちも気に入っているようです。


(2006年6月9日)  【関連書き込み

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