おリョオリのうた 2005年・冬
「蒸し芋」
かつて、わが家でもよく蒸し器を使っていました。角張ったずんどう鍋のよう
な形状で、底に水を入れて沸かし、蒸気を利用して茶碗蒸しなどを作りました
が、実際はそれよりも冷やごはんを蒸すことが多かったようです。冬になると
細いさつまいもをたくさん蒸し器に入れ、蒸し芋(ふかし芋)にして、おやつ
や昼ごはんの代わりにしていました。蒸し芋は水分が多く、水っぽく感じるの
で、わたしは焼き芋のほうが好きでしたが、なかなか作ってもらえずに、渋々
ごはん代わりの蒸し芋を食べていました。塩もバターも付けなかったですね。

今では蒸し料理の大半は電子レンジになりました。太い丸々としたさつまいも
でも、よく洗って、濡れたまま耐熱皿に置き、ふんわりラップを掛けてレンジ
にかけると、いとも簡単に蒸し芋が出来上がります。ただ、わたしは多少不満
なので(^_^;)、できた蒸し芋を4ツ割りにし、ガスレンジ(魚焼き器)で強火
で表面を香ばしく焼いて、焼き芋として子たちのおやつに出しました。本当は
落ち葉焚きの際に焼くとか、アルミはくで包んで石油ストーブの上に置くとか
して、じっくり焼けばいいのでしょうが、この方法でも充分美味しいですよ。

じゃがいもを皮のまま蒸してバターを添えると「じゃがバタ」ですが、さつま
いもの蒸し芋でも、そのまま食べるだけでなく、輪切りにして薄く油を引いた
フライパンで両面を焼く(三島焼き)とか、つぶして「きんとん」とか、目の
粗い網を通してモンブラン風?にするとか、いろんなお菓子の元にできます。
勿論、つぶしてバターや生クリームを混ぜ、成形して焼き直す、という手間を
掛ければ、欧風スイートポテトもできるのでしょうが、ちょっと面倒ですね。


(2005年12月6日)  【関連書き込み

「はりはり汁」
鯨と水菜の鍋をはりはり鍋と言います。これは、あまり煮込まずに食べる水菜
の食感(ぱりぱり?)に由来しています。これを1人前の汁物に仕立て、禁断
の実である鯨を牛に代えたのが、この「はりはり汁」です。材料はシンプルな
がら、多少七味を振ると美味しいこともあり、やはり冬向きのメニューでしょ
う。牛ではなくて鴨で、とも思いますが、まだ残念ながら試しておりません。

材料:牛赤身焼き肉用(1人3〜5切れ)、水菜、ごま油、醤油、酒、七味。
手順:1)水菜はよく洗い、めいめいのお椀に入る長さに切る。加熱前の分量
  でお椀に1人山盛り1杯ぐらい。2)鍋に人数分のお湯を沸かし、醤油で
  通常の吸い物より少し濃いめに味付けしたあと、酒、七味で風味をつける。
  3)フライパンにごま油少々を強火で熱し、牛肉を色が変わる程度に両面
  サッと焼いて、すぐに煮立った鍋に入れる。4)水菜を鍋に入れ、次に煮
  立つ直前で火を止めてできあがり。お椀によそい、熱いうちにいただく。

肉の表面を強火で固めて、煮込んだときの縮み方を少なくします。余分な脂を
落とし、ごま油の風味を付ける……ほど、長くは焼きませんが(^_^;)。薄揚げ
の切れっ端を少し入れて、「コロもどき」と洒落るのもいいかもしれません。
なお、先日行った「おでん」屋では、水菜の束を7〜8分煮込んだものも出し
ていました。水菜は生でサラダにできるぐらいで、煮込みすぎると苦くなって
繊維分も気になりますので、わたしは加熱は最低限にすることを推奨します。


(2005年12月7日)  【関連書き込み

「おだまき」
平たく言えば、うどん入りの茶碗蒸しです。おだまきとは、麻糸を球状に巻い
たもの。「お・だまき」であって「おだ・まき」ではありません。おだまきと
いう植物もありますが、花を元祖おだまきに見立てたんでしょうね。うどんの
おだまきは何故「おだまき」なのか知りませんが、お碗の中でうどんがとぐろ
を巻いているということなんでしょうか。もっとも、茶碗蒸しですから、卵の
固まった中にうどんが潜むかっこうになり、球状に見えるわけではありません。

今回はレシピを付けません。蒸し煮ならいいのですが、純粋な蒸し料理は苦手
で、しかも卵液を蒸すので、加熱が足りないと卵が固まりきらず、長すぎると
卵に「す」が入ります。今までに、自分で茶碗蒸しを作ったのは2回ほどしか
ありません。自信が持てないので、みなさんを“実験”に巻き込むようなこと
はやめておきます(^_^;)。実際、茶碗蒸しの具にうどんを入れるだけですし。

おだまきも冬の食べ物でしょうが、卵のふんわりした味わい+うどん、といえ
ば、かき玉うどんもいいですね。こちらは、うどんのつゆにかたくり粉でとろ
みを付け、沸騰させたところへ溶き卵を垂らし入れてよくぐるぐる混ぜます。
卵が固まれば火を止めて、湯がいたうどんを入れた鉢にたっぷりつゆを張り、
おろししょうがや七味を添えていただきます。月見うどんの黄身を崩したり、
煮込みうどんに溶き卵を入れたりするより、あんかけにしたほうが卵がふわり
と仕上がり、上品です。とはいえ、おだまきの方がよほど上品でしょうけど。


(2005年12月10日)  【関連書き込み

「鯛のおつい」
わたくしごとですが、12月12日は※§回目の誕生日です(あら、字が化け
ました? (^o^))。小さい頃は、家族のだれかの誕生日だというと、赤飯を炊
き、めいめいに尾頭付きの鯛の塩焼きが付いて、大根なますも恒例でした。子
どもだと、なかなか鯛1匹は食べきれないのですが、「箸さえつければよい」
と言って、大人はニコニコしています。子どもが残した分はどうなるのか……
それは翌日には「鯛のおつい」になって、大人たちが食べてしまうのでした。

おつい(おつゆ=汁物)は、鯛のあらと長ねぎだけを具にして、薄い醤油味で
作りますが、もともとが塩焼きの鯛なので、ひれなどには焼くときの化粧塩も
残っているはずです。だからあまり醤油は濃くしません。大きな鍋に何人分も
の鯛と、ぶつ切りにした長ねぎを入れ、しばらく煮ると、鯛のエキスと油分が
いっぱい出てきます。これをラーメン鉢などによそって、汁も楽しみ、骨など
に残った食べ残しの身もせせるのです。目玉の周りが好きな人もいました。

昨今では、わが家は鯛のあらを買ってきて、少し焦げるほどに魚焼き器で焼い
て、ねぎとともに「おつい」にします。近頃は養殖鯛に何を食わせているのか、
焼きが浅いと鍋が油で覆われるほどギトギトしますので、焼くときに適度に油
を落とします(ときどき身ごと燃えたりします)。焦げによる香ばしさも味の
うちです。長ねぎは斜めに切ったりせず、筒切りで大量にぶち込んでください。
鯛のうまみを(うろこに気をつけて)最後の1滴まで飲み尽くしましょう!


(2005年12月12日)  【関連書き込み

「蒸しずし」
すしは元々、魚のなれずしから発展したと言いますが、「蒸しずし」は割合、
しゃれたおすしの部類です。折りや蒸籠(せいろ)に入れたばらずし(ちらし
ずし)を蒸して、熱々をいただくのですが、わが家ではわざわざ蒸しずしを作
るといったことはせず、前日に残ったばらずしを蒸し直して「蒸しずし」とし
ていました。まぐろやいかなどの海鮮ちらしだと、蒸すのはまずいかもしれま
せんが、わが家の具は高野豆腐やしいたけ程度ですから問題ありません(^_^;)。

もちろん、うなぎ、あなご、蒸しほたてなどを使ったちらしずしなら、そのま
ま蒸していいでしょう。酢飯を蒸すことによって、若干酢がやわらぎます。ご
飯にまぜたちりめんじゃこや、酢じめのままかりなどは、蒸すことによって熱
が通っても、味がさほど極端には落ちません。錦糸卵は、前日のが残っていれ
ば蒸せばいいですし、新たに作って、追加でトッピングしてもいいでしょう。

昔は、数日前に書いた「蒸し器」で蒸していましたが、今はラップしてレンジ
でチンです。ありがたみが薄れますが、時代だから仕方がないですね。冬場は
ばらずしを作るにしても、多めに作っておき、翌日の蒸しずし用にも回してみ
てはいかがでしょうか。巻きずしが残った場合、同様にチンして「蒸しずし」
のようにすることもできます。しかし、どうしても海苔がくにゃくにゃになっ
てしまい、風味が落ちます。1日置いた巻きずしは、ご飯が硬くなるけれども
翌日そのままいただくか、海苔の食感を犠牲にして蒸すか。難しい選択です。


(2005年12月16日)  【関連書き込み

「トディー」
大阪でも今晩は氷点下になり、この冬いちばんの寒さなどと言われています。
こんな夜はホットウイスキーで体を温めてはいかがでしょうか。「トディー」
と言うのは砂糖やレモン、クローブ(丁字のつぼみ)などを入れたウイスキー
のお湯割りで、アイルランドでは薄切りレモンの半月切りの、身の部分に3〜
4本の丁字を刺したものを、砂糖で甘みをつけたお湯割りのウイスキーに浮か
べます。丁字は頭の部分をライターなどであぶって焦がしてもいいでしょう。

ウイスキーをお湯で割っただけで、立派なカクテルだといいます。なら、焼酎
のお湯割りに梅干しを入れたものは、世界に誇れる日本発のカクテルかもしれ
ませんが、そんなことを思って飲んでいる立ち飲み屋のお客はいないでしょう
ね (^o^)。でも、トディーはレモン、丁字と、いかにもカクテルっぽい材料が
使われるので、これこそ立派なカクテルでしょう。見た目さえ気にしなければ、
バーテンダーさんの手を煩わせなくとも、家庭で充分楽しめるカクテルです。

わたしは、アイリッシュ・ウイスキーのジョン・ジェムソンやブッシュミルズ
で作るのが好きです。勿論、お好みならスコッチでもバーボンでも日本のウイ
スキーでもかまいません。嗜好品である酒は、他人に押し付けられないもので
すから。砂糖やお湯の分量も、各自の好みで調整すればいいと思います。ただ
し、わたしはアイリッシュで作ったトディーが、いかにウマいかを説くことは
できます。寒い夜に、温かくて甘く飲みやすい酒……ぜひ、お試しください。

<参考>「アイリッシュはなだんな(2005年12月17日)  【関連書き込み

「チンゲンサイのクリーム煮」
わが家には普段、カレー、ハヤシ、ビーフシチュー、ホワイトシチューのルー
が常備されています。箱の裏には「水を何cc」とか「ルーを半量使うときに
は水を何ccにせよ」とか書いてあります。しかも、「半量」のルーにはだい
たい4つか6つの山になるような切れ目が入れてあります。つまり、そのルー
ひと山あたり、何ccの水で溶かせばいいのかが分かると、ひと山単位で料理
に使えることになります。今回はその方式を応用してクリーム煮を作ります。

材料:チンゲンサイ、桜えび(干しえび)、ホワイトシチューのルー各適量。
手順:1)チンゲンサイは1枚ずつはがし、根元などを洗う。大きな葉は軸に
  縦に包丁を入れて、葉ごと2つか3つに分ける。2)フライパンにルーを
  溶かすのに必要な分の水を沸かし、チンゲンサイを茹でる。3)火が通っ
  たらいったん火を切り、ルーを入れて溶かしてから、再び点火する。4)
  沸騰したら桜えびを入れ、火を切って余熱で火を通して、できあがり。

チンゲンサイは、軸と葉を分けてしまうほうが、調理はしやすいです。でも、
中華料理屋で出てくるのは、軸と葉が一体になったチンゲンサイですから、上
のレシピでは少し頑張りました。さらに言えば、かに身を散らし、仕上がりに
卵の白身を回し掛けて火を止め、ごま油数滴を垂らせば言うことないでしょう。
ま、それは目標として、とりあえずの入門編です。冷蔵庫にチンゲンサイしか
野菜がないとかいうピンチに、どうぞ役立ててください。そんなレシピです。


(2005年12月18日)  【関連書き込み

「かぼちゃの煮物」
冬至と言えば、ゆずの実を入れたお風呂か、かぼちゃの煮物が話題に上ります。
お風呂はともかく、かぼちゃはいとも簡単にできますから、冬至の日と言わず、
ぜひ普段にも食べてください。もっとも、本来は醤油味で煮付けたかぼちゃを
言うのでしょうが、わたしのは至極薄味です。良く言えばかぼちゃ本来の味を
生かしているとも言えますが、適当に作れるんだ、という証左でもあります。

材料:西洋なんきん、昆布茶、醤油(あれば、顆粒だしの素)各適量。
手順:1)なんきんはよく洗い、種とわたを取って、一口大に切る。2)それ
  を鍋に重ならないように(皮を下にして)並べ、昆布茶・顆粒だし各少々
  を振り掛ける。3)なんきんの切り身の半分の高さまで水を入れ、醤油を
  ごく少量垂らして、ふたをして中火にかける。4)湯気が上がったら弱火
  にし、水がほぼなくなるまで蒸し上げたら、火を切って、できあがり。

かぼちゃを「煮る」というより「蒸す」料理です。でも、味はしっかり付いて
います。ほんの少しのだしと塩加減のほかは、かぼちゃ本来の味です。日本の
黒皮なんきんなどと違って、だいだい色の実の西洋かぼちゃは、それ自体甘く
て味わいも濃いものです。大量にできますので、飽きたら崩してサラダやコロ
ッケにしてもいいですが、ぜひ毎食でも味わっていただきたいですね。冷蔵庫
で冷たくしたものはマヨネーズも可だと思いますが、それはお好みでどうぞ。


(2005年12月20日)  【関連書き込み

「ビュッシュ・ド・ノエル Buche de Noël」
「クリスマスの薪」。食べ物としては、薪(丸太)形のケーキを指します。薄
く焼いたスポンジケーキ(カステラ)をロールケーキにして、茶色いクリーム
などを塗ったもの。市販のものは切り口に年輪を書いたり、節を作ったりして
あります。最近はクリスマスといえば、これがわが家の定番になっています。
しかし、これを作るのではありません。ケーキは難しいので、主食になるもの
にしました。題して「ビュッシュ・ド・ノエル・ド・スシロール」です(^_^;)。

ごはんに細かい削り節か粉かつおと醤油を混ぜ、おかかごはんにします。よく
乾いたまな板を縦に置き、すしのりを手前と奥に2枚並べて置きます(奥側が
上になるように少しだけ重ねます)。ここに、おかかごはんを薄く敷き、手前
からくるくると年輪を作るように巻きます。できた丸太は、少し時間を置いて
なじませ、食べるときに薄く斜め切りするとよいでしょう。薄切り牛としめじ
のうま煮、三つ葉か水菜の葉、ミニトマトをあしらうと、色合いも綺麗ですし、
栄養のバランスも良く、いかにものり巻きの丸太が、丸太らしくなりますね。

小さい頃、クリスマスに「アイスクリームケーキ」を初めて食べて、寒いとき
に冷たい物を食べる妙味を知りました。それからも、いちごがたっぷり乗った
デコレーションケーキは食べたことがあります。最近はベビーシュークリーム
を高く積んだようなケーキが流行りなんでしょうか。ドイツのシュトーレンと
いう地味なパウンドケーキも、クリスマス菓子のひとつですね。クリスマスは、
その前の4週間と、それからの12日間を楽しむものだそうですが、ニッポン
はそこまで「神の国」ではないので、お正月優先で仕方がないですかね (^_^)。


(2005年12月23日)  【関連書き込み

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