映画「ロード・オブ・ザ・リング」
〜第2部「二つの塔」


――原作マニアの立場からの独善的感想


 ◎よくがんばったのは、スメアゴル!


 第1部でも感動した大パノラマや原作への熱意はもちろんですが、第2部で

新しい感銘を与えてくれたのは、何といってもゴラム/スメアゴルでしょう。

生身のゴクリが演じているのかと思うほどのリアリティ。俳優さんとCG技術

の合作ということですが、丁寧に吟味してつくられたのがよく伝わってきます。

 まず風貌が私のイメージに相当ぴったり来ました。寺島龍一さんのゴクリ

(原作の日本語版の挿絵)も素敵?ですが、映画ではもっと人間くさく、映像

であるぶん、表情も非常に豊かです。それでいて、「禁断の池」に飛び込むと

ころなど、カエルっぽい(カッパのようにも見えますね)。

 それから、中身の描き方も良かったと思います。確かに、ゴラムとスメアゴ

ルの葛藤は、原作より単純化されていますが、映画として分かりやすく、共感

を呼ぶキャラクターに仕上がっていると思います。何しろ、影の主役なのです

から、嫌われるだけではいけません。かっこいい悪役や、強い悪役というのは

映画では事欠かないですが、これだけ醜く、惨めで、どうしようもないキャラ

クターを、これだけ一生懸命描いたというのは、スゴイです。


 ☆やはり短い。DVDに期待します。


 今回の映画は、原作の第2部の最後まで行き着きませんでした。それでも、

やはり省かれた場面があります。たとえば、エント関係。「木の鬚」のお宿で

メリーとピピンがエントの飲み物をもらうところが見たかったし(注)、エント

の「生類の名簿」の歌や、「ホーン、ホム」とラッパを鳴らし腹太鼓を打つ行

進をもっと。

 また、ヘルム峡谷の奥の「燦光洞」は、映像で時々キラキラ光っていたので、

ギムリの誉め言葉を聞きたかったですね。


 (注)DVDでこの場面を発見しました。そのほかDVDでは、メリーとピ

   ピンアイゼンガルドの廃墟で食べ物やパイプ草を発見する場面が追加さ

   れており、楽しめました。


 ◇一ノ谷の合戦か?
        角笛城の合戦のラストシーン…  


 ちょっと不満だったのは、ガンダルフとエオメル軍によって角笛城の合戦の

形勢が簡単に逆転してしまったこと。ガンダルフがものすごい魔法でも使うの

ならともかく(少々白く光っていましたけど)、一万の敵軍が砦の中にまで攻

め入っているのに、あれで急に勝てるものでしょうか?

 確かに、急坂を駆け下る突撃シーンは、それだけでは圧巻でしたが。

 やはり、ファンゴルンの森が不気味に前進して、一万のオークをのみこむと

ころが、見たかったですね(注)。城壁の上に立つアラゴルン様の勇姿も。


 (注)DVDにはこのシーンがありました。でも、ちょっと物足りない感じ。


 ▽まとめ


(1)よいと思った所

 ゴラム全般、セオデンが癒されるシーン、角笛城の合戦直前の緊迫感などな

   どに、作り手の緻密さ、丁寧さが感じられた。

 黒の乗り手の乗る、翼のある怪物。すごかった。声も、効果的。

 それから、「じゅう」こと「オリファント」。すごくよかった。フィギュア

   (お人形)があったら、飾りたい。サムに歌ってほしかった。

 ローハンの人々の描写。ケルトっぽくて私ごのみでした。

(2)気に入らなかった所

 アラゴルンが崖から落ちてから生還するまでのシーン。アルウェンを出すな

   ら、もっと違う方法でもよかったのでは。

 フロド。若いせいでしょうか、いくら指輪が重荷とはいえ、ちょっと弱々し

   すぎたのでは。今からこんなでは、第3部を乗り切れるか、心配です。

 サルマンは、アイゼンガルドが襲われたからといって、バルコニーで何度も

   おろおろしないでほしい。早く引っ込みなさい、仮にも魔法使いが、み

   っともない。

 「偉大なる御目」。あんな様子だとは思ってもみませんでした。サウロンは

   原作では漠とした描写しかないので、もろにあのように存在するとは…

(3)原作との違いが気になった所

 死者の沼地の「死人の蝋燭」、もっと青白いリン光のおどろおどろした灯に

   してほしかった。(日本人なので、)お墓に出るヒトダマ風なのを想像

   していたのですが。

 ファラミアが最初フロドを連行しようとするところ。原作にはまったくあり

   ません。しかし、原作のファラミアは、人間、しかもデネソールの息子

   にしては、できすぎた性格だと常々思っていたので、映画のファラミア

   の方が、人間ならではの葛藤や弱さを浮き彫りにしていて、印象深いか

   もしれません。

(4)原作へのこだわりを感じた所

 第1部と同じく、セリフ全般。とくに、ちょっとしたユーモアでほっとさせ

   るサムとギムリ。原作にはないセリフでも、少しも違和感がなく、よく

   よく吟味されていた。

         (第1部のまとめに合わせて、思いついたものだけ書いてみました)


 ○おまけ


 ロードショーがもうじき終わりそうな四月半ば、やっと、観に行けました。

第1部で映像世界のおよそのイメージが分かっていたし、遅くなったぶん、第

2部についても色々と聞いていたので、落ち着いて楽しんで観られました。

 それにしても、ニュージーランドの山々は美しいのですねえ。行ってみたく

なりました。

 さあ、残りたくさんの展開を、第3部でどのようにみせてくれるのか、また

一年間ワクワクと待つことができます。
 

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