5.マロニエ並木の下で
パリの水道の水は飲まないほうがいいらしかったので、「コン ビニかなんかで水を買おうよ」と相談していたのだが、その晩は 面倒になったので、部屋の冷蔵庫にあったエビアンで間にあわす ことにし、どこにも行かずに寝てしまった。翌朝はホテルでコン チネンタル形式の朝食を食べ、華氏はシャツの上にベストと阪神 タイガースのウインドブレーカーを着込んで、9時に街へ繰り出 した。 マイヨ広場の角を曲がると、すぐ凱旋門が大きく見えている。 エトワール広場(シャルル・ド・ゴール広場)にある凱旋門は、 ロータリーの中央にあり、観光客は地下道をくぐって門の真下に 出る。このアーチの上に登ろうか、どうしようか、ためらってい ると、「さあさ、こっち」と言わんばかりに、係員のような人が チケットをくれて、華氏らを地上へ押しやった。「あれ? タダ なんか?」。わけが分からなかったが、とにかく華氏らは門の4 本の足のひとつにとりつけられた上り階段を歩きはじめた。…… 合計470段! いやあ、しんどかった……が、屋上へ出てみる |
と、パリ市内が一望できる。……あれがエッフェル塔。こっちが シャンゼリゼ。突き当たりがルーブル。反対側にはアルシュの新 凱旋門、あちらこちらに寺院が多数……。空はどんよりとしてい て肌寒かったが、ついに憧れのパリに来たぞ!という実感がわい た。 また階段を使って地上へ下りた。朝っぱらからハードな1日に なりそうだ。2人でシャンゼリゼを歩く。思ったより通りの幅は 広く、歩道も閑散としている(平日の午前中だったからか?)。 「寒いからコーヒーでも飲もうよぉ」と妻が言う。しかし、カフ ェテラスで飲むと、よけい寒そうだ。「ちょっと、ゲランの本店 に寄るね」と言って、妻は香水店に入っていった。「(会社の) U田さんにあげたらいいかな、って思うねんけど」。結局、ミツ コでも夜間飛行でもなく、オードトワレと口紅を、カードで買っ た。また歩き出して、プラタナス並木とマロニエ並木の下に屋台 を出していたクレープ屋さんでコーヒーを買う。「あったかくっ て、めっちゃおいしい!」。1杯6フランだから120円か。シ ャンゼリゼの東の終点、コンコルド広場が見えてきた。 → 6「昼間からワイン」へ |