20.美しきベンビュルベンの夕景
N4からスライゴーの中心部に入ると、サザン・ホテルはすぐ に分かった。チェックインを済ませた華氏らは、すぐにまた車に 飛び乗り、明るいうちにベンビュルベンを見ようと、車を走らせ た。スライゴーの北側にそびえるベンビュルベン(Benbulben、 ブルベン山)は、頂上が台地状、中腹は絶壁、裾野はなだらかな カーブを描く、といった独特の形状の山だ。氷河に削られた<U 字谷>でできた地形だという。夕陽を浴びて桃色に染まった西向 きの山肌が美しい。思わず車から降りて見とれていたが、また雲 が広がってきて陽が陰り、その景色はわずか10分たらずで終わ った。今日、長い距離を走って、ここ、ベンビュルベンまでたど り着いた華氏らに、まるで神様がご褒美をくださったかのようだ った。 スライゴーからは“北”との国境まで伸びるN16を5マイル 走り、山の中腹にある2条の小さい滝を見て、すぐ引き返した。 次に、N16の少し西側のN15をやはり5マイルほど走って、 ドラムクリフ村にあるノーベル賞詩人・イエーツの墓を訪ねた。 そして、ホテルへ。途中で、ガソリンがなくなってきたので、給 |
油所に立ち寄った。華氏らがマゴマゴしていると、ニイちゃんが 1人来て「ハウマッチ?」と訊く。華氏が「とぅえにぱうん」と 答えると、「OK」と言って、ガソリンを入れてくれた。量では なく金額で給油する、という証拠に、メーターは金額(ポンド) 表示になっている。結局、この2日間で340マイル(550キ ロ)走り、ガソリンを£20(3000円)で34リットル給油し た。 ホテルに車を置いて、町なかへ出た。ここはスライゴー・カウ ンティー(郡または県)の中心地だが、あくまでタウンであって シティーではない。8時近くになり、パブとコンビニ?以外は全 部閉まっている。めぼしいレストランもなかったので、1軒のパ ブに入った。しかし、そこには食べ物といえるものはナッツとチ ョコレートしかない。大阪ミナミのアイリッシュ・バーにはフィ ッシュ・アンド・チップスがあったが、こちらの国では、パブは 飲むだけの所、といった感じだ。仕方なく、ギネスを1杯ずつ飲 み、ホテルに帰って、レストランで食事をした。もちろん、コー ス料理は頼まなかったものの、それでもお腹がいっぱいになって しまい、それ以上、ホテルのパブや外のパブには行けなかった。 → 21「炭酸のない水が飲みたい」へ |