22.きょうもあせって走れや走れ
ゴルウェーの街の中心には、100メートル四方ほどのエール ・スクエア(ケネディ・パーク)という公園がある。うららかな 日だったので、多くの市民が憩っていたほか、物乞いも多数うろ うろしており、缶か何かを持って、華氏らにも近寄ってきたりし た。幸い華氏は英語が分からなかったので、一言も発することな くやり過ごした。こちらでは子どもを連れた女の乞食が多いらし く、そういえばダブリンのリフィー川の橋のたもとにも、みすぼ らしい格好の女の人がへたり込んでいたのを思い出した。また、 エール・スクエアの周りには、鉄道のゴルウェー駅をはじめ、バ ス・ステーション、高級ホテル、レストランなどが立ち並んでい る。華氏らは、そのうちの一つ、旅行書に載っていた魚介料理が 美味しいという「リドンズ・オブ・プロスペクト・ヒル」に入っ た。 <本日のスープ>がついたお昼のコースが£6弱だったので、 お腹がパンクするほどには出ないだろうと思い、安心してコース を注文した。ところが、ここで出てきたものは……スープ、サラ ダに続いて、メインの魚料理の横に添えられた大量のフライドポ テトだったのである。隣の席などを見ると、年配のご婦人がたは ポテトを残したまま席を立ったりしている。(そうか、ポテトは 残してもいいんだ)……その光景に妻は特に安心し、ポテトを残 してデザートに挑んだ。そして、お腹いっぱいになってレストラ |
ンを出た。[i]の前に停めた車に戻った華氏らは、市街地を抜 け、市の中心から西へ2キロほど離れた高台にあるアーディロー ン・ハウス・ホテルにたどり着いて、2時すぎにチェックインし た。 華氏らは荷物だけ部屋に残し、最後のドライブに出かけた。N 6、N18とたどって南へ。ゴルウェー湾の南側に沿って走るN 67を疾走し、古城ながら現在では<中世風宴会>の催しが開か れたりするダンガイラ城へ。海辺ではあるが、あまり風がなかっ たため暖かく、しばらく芝生に寝ころがった。バリボーガンの町 からは、L54という道を通った。Nが国道だとすれば、Lは地 方道か。左手は山。山といっても、一面灰色のはげ山。石灰岩が むき出しで、木など1本も生えていない。右手は海。道の高低に よって、海面が近くなったり、道ががけの上になったりする。そ して、華氏らがたどる道は、舗装はされているものの、センター ラインがなく、すれ違いがやっと、というぐらいの曲がりくねっ た道。両側には大人の胸ぐらいの高さの石垣がずうーっと続き、 見通しだけはいいが、ここを華氏は時速50マイル(80キロ) から70マイルぐらいでぶっ飛ばした。幸い、ほとんど対向車は なく、ひやっとすることはなかったが……。目的地のモハーまで は片道50マイルほどだが、そんなにあせって運転したのは、レ ンタカーを夕方6時ごろには返そうと思っていたからである。 → 23「モハーの人助け」へ |