7.パリ市内を歩く、歩く

 昼食後、すぐ川べりに出て、新橋、いやポンヌフを渡り、シテ
島へ。アンリ4世だったかが、偉そうに馬に乗っている銅像があ
る。裁判所の南、ステンドグラスが美しいサントシャペル教会に
入った。入り口で「どうぞ」と言わんばかりに 「gratuit」(無
料)と書いた券を差し出される。「あれ? 凱旋門もタダやった
けど、ここもタダや。ええんかいな?」。9月17日土曜日、な
ぜパリ市内の観光地がタダで入場できたのかの理由は、今もって
不明。
 つづいてノートルダム寺院へ。タダ。表側は工事中だったが、
妻は内側からバラ窓が見られて満足している。外へ出ると、すぐ
水上バス乗り場が見つかった。1人24フラン(480円)でエ
ッフェル塔前まで乗る。華氏は大阪の水上バスには乗ったことが
ないので、残念ながら比較ができない……。肌寒かったので、岸
に上がると華氏は紅茶を、妻はホットチョコレートを飲む。「む
っちゃ甘いわー、これ」。エッフェル塔には、高いところが比較
的苦手な妻の意見を尊重して、結局昇らずに、公園などを散歩し
てミラボー橋へと向かう。途中で、道端でドラム缶の上に焼き栗
を並べて売っているニイちゃんを妻が目ざとく見つけ、「ねえね
え! 焼き栗食べよ! 焼き栗!」。……どうやら華氏の出番ら
しい。
 「う〜、こんびやん?」「ディスフォン」「でぃ?す。ぼん。
……せぼん?」「メルスィ」。華氏は200円で、夜店のギンナ
ン程度の量の焼き栗を手に入れた。「やったやった! わー、焼
き栗や。うれし! わー、ぬくぅ!」。妻は大喜びである。川べ
りの遊歩道のベンチに腰を下ろして、2人で焼き栗を食べる。日
本の栗とも違い、甘栗とも違い、やや生っぽくて、クルミのよう
に身の中に渋皮が入り込んでいる。まあまあイケルなあ。20数
個あった。ヨカッタヨカッタ。再び歩き出して、ミラボー橋へと
向かう。途中、ラジオフランスの前の橋には、自由の女神さんが
おられる。緑色に塗られたミラボー橋を渡り、さあ、ブーローニ
ュまで地下鉄に乗ろか、と言い始めたとき、寒さとさっきの紅茶
のせいもあって、華氏は生理的に限界に近づきつつあった。

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