16.あこがれのパブへ
雨の中、セント・パトリック大聖堂を出てから、慎重に地図を 検討し、第1目標を「アイルランド銀行本店前の道路・東行き」 に置いて、運転を再開した。ここからなら、すぐにホテルのほう へ曲がれる。今度は、渋滞はしていたものの、無事にホテルにた どり着くことができた。夕方6時だが、まだ明るい。ちょうどお 彼岸時分だし、陽が朝8時ごろ昇るので、夕方は8時に陽が沈ん でも不思議ではないのかもしれない。今回はフロントで華氏が、 「うえありず・ぱーきんぐ」と尋ねた。すると受付嬢は簡単な地 図を示して、「ココヲ、コウ曲ガッテ、ココカラ、コノ駐車場ニ ……(オ気ノ毒サマ)」と、英語で教えてくれた。一方通行の多 さには、現地人も閉口しているらしい。ともあれ、公営の駐車場 はすぐに見つかり、いちばん入り口に近いマスに車を入れた(こ のことは、翌日とても幸いした)。駐車場までは車でだいぶ時間 がかかったが、駐車場からホテルまでは、歩けば2分の距離だっ た。 さて、今日はどうしてもパブに行きたい。そのためには、レス トランで食べすぎないことが肝要だ。もちろん、いきなりパブに 行く、という手もあるが、一応の腹ごしらえはしておきたい。リ フィー川沿いやオコーネル通りにも店はあるようだが、ホテルの あるテンプルバー界隈もにぎやかな所だ。そこで、今日は、ホテ から西へ38歩ほど?歩いた所の「ギャラガー」に入った。店頭 |
のメニューの<アイリッシュ・シチュー>にひかれて、である。 家庭的な料理を多く出す店で、2人ともシチューとボクスティー (いわば、西洋風春巻き)を取った。それと、ハーフ・パイント ・オブ・ギネスで、「チヤ〜ズ!」。シチューは、乱切りのタマ ネギ・ジャガイモ・ニンジンとマトン肉を使い、塩と胡椒で味付 けをしただけ、といった素朴なもの。この店で、アイルランドに はギネスのほかにも<マーフィーズ>という黒ビールや、<ハー プ>というビールがあることを知った。2人はそこそこ満腹にな った。 代金£22とチップ£1を、華氏たち担当の女店員に払って店を 出た。さて、いよいよパブだ。アイルランド銀行の前のデーム通 りを渡って1本入ったところに、「スタッグス・ヘッド(牡鹿の 頭)」という店がある。旅行書には載っているのだが、雰囲気が よくわからない。中をうかがいながら、恐る恐るドアを開けた。 もちろん、だれも「いらっしゃい」などとは言わない。木ででき た店内を見渡すと、カウンターで1組、2組、いす席で1組、2 組が、静かに酒を飲んでいる。店の中央には、大きなシカの頭の 剥製だ。華氏らは入り口近くのいす席に陣取り、華氏が手慣れた ふうにカウンターで注文した。「あ〜、ぷりーず、ハーフ・パイ ント・オブ・ギネス、あんどぉ、ハーフ・パイント・オブ・ハー プ」。この国の相場では、1パイント£1.95(290円)、半パ イント£1.12(170円)。乾杯は、何度してもいいものだ。 → 17「駐車場で冷や汗」へ |