19.ニューグレンジに陽が射した

 ニューグレンジ古墳のそばにあるレストランに入った2人は、
スープで腹ごしらえをした。このとき華氏は<エッグ・マヨネー
ズ>なるメニューも注文しようとしたのだが、あいにく売り切れ
ていたため、サンドイッチで我慢した。いまだに<エッグ・マヨ
ネーズ>がどういうものなのかは不明である。食べ終わって、古
墳へ。雨上がりの芝が陽に映えて、きらきら輝いている。巨大な
円墳。巻き貝のように、大きな石を渦巻き状に並べて、こんもり
とした形を作っている。芝生の上に点在する、背の高さ以上もあ
る石。墳墓の周りを取り囲むように立っている。石室の中には、
説明する係員の案内で入れるようにもなっている。華氏らは受付
でお金を払い、説明を受けるときのグループ分けなのか、胸に赤
い丸いシールを貼ってもらった。華氏らの先のグループは、みん
な黄色いシールを付けていた。石室への通路(羨道=せんどう)
の前で、有名な<渦巻き模様が刻まれた巨大な石>を見て、ひと
通りの説明を受けてから、30人ほどが順に、羨道を奥へと入っ
た。
 中はとても狭い。30人も入ると息苦しく感じるほどだ。英語
で何やら説明してくれるが、華氏には全くちんぷんかんぷん。さ
しもの妻も、係員が冗談を言ったのか、大勢の人が笑ったところ
で一緒に笑えなかった(理解できなかった)といって、自分の英
語力を嘆いていた。石室のいちばん奥には、石のお盆のようなも
のがある。ここには1年でただ1回、冬至の日に、羨道の上に開
けられた小さな穴から朝日が差し込むらしい。照明を消して、朝
日になぞらえたスポットライトで照らしてみせる、というデモも
やっていた。外に出て、外周をぐるっと回る。裏側にも渦巻きを
刻んだ石がある。この模様が何を意味するのかは、今もって研究
者の間でも結論が出ていないらしい。ぽつりと少し雨が降ってき
た。
 スレイン、ネイバンと通って、N3をダブリンの方へ少し戻る
と「タラの丘(Hill of Tara)」。ここは自然の丘陵地で、と
ても見晴らしが良く、昔、王家の居城が置かれた所だという。こ
の時点でかなりあせっていた華氏は、ついに教会ふうの資料館に
は立ち寄りもせず、(早く見てこい)と言わんばかりに、妻に1
人で見学に行かせた。そして、すぐに出発。ネイバンからいわば
2級国道のN51、N52を経て、マリンガーでダブリンとスラ
イゴーを結ぶN4に乗った。ひたすら飛ばして、途中、4時ごろ
に、やや大きな町のキャリック・オン・シャノンで、お茶とピザ
で休憩。元気を回復してから、また飛ばしに飛ばして、ついに5
時半、まだ暗くならないうちに、本日の宿泊地・スライゴーに、
息も絶え絶えになったかのようにしてたどり着いたのだった。

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