6.昼間からワイン
パリの街は古い建物が多い。何でも、昔建った館か何かを、壊 さずに別の施設に転用しているらしい。およそ役所らしくない建 物が役所だったり、いかにも駅っぽい建物が、駅ではなく機能し たりしているのを見ると感心する。コンコルド広場からすぐ南の セーヌ河岸にも、数多くの石造りの建物があった。「あ。エッフ ェル塔が見える。……あの手前の金色のがアレクサンドル3世橋 かな?」。曇り空の下、セーヌ川をゆったりと船が行き交ってい る。 セーヌ北岸を東へ歩いてルーブルへ出た。美術館を本気になっ て観ると、きょうの予定が全部ふっ飛びそうなので、外からだけ 眺める。確かに中庭のガラスのピラミッドは変だ。誰や、あんな もん作ったのは。ルーブルの北側の通りを歩くころ、お昼を回っ |
た。「ねえ、何か食べよか」と妻。華氏は目をこらしてレストラ ンとかカフェテリアとか書いてある看板を探す。「あのへん、何 か食べ物屋さん、ありそやで。行ってみよか」。妻は素直に従っ た。 入ったのは三差路に面した小さなカフェテリア。肌寒かったの で、ヴァンショー(ホットワイン)を頼む(昼から!……という のもフランス流か)。華氏はホットサンドイッチのようなクロッ クムッシュ、妻は鱒のローストを注文した。華氏は美味しくいた だいたが、妻は30センチ近いマスの塩焼き?をナイフとフォー クで食べるのに悪戦苦闘していた。(これから1週間の旅行中、 魚はずっとこうやって食べなあかんねんなあ……)。静かに横た わるマスの目玉と目を合わせながら、覚悟するふたりだった。 → 7「パリ市内を歩く、歩く」へ |